研究課題/領域番号 |
24655139
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 哲晶 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30374698)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 二酸化炭素 / カルボキシル化反応 / ニッケル / 銅 |
研究概要 |
二酸化炭素(CO2)はその豊富さや安全性から有用な炭素源として期待されており、その利用法の一つに触媒的な安息香酸の合成が挙げられる.本研究課題は,この二酸化炭素固定化の駆動力として光エネルギーを利用する新規触媒系の構築にある.本年度は,これらの基礎的知見を得るために,種々の遷移金属触媒を用いるカルボキシル化反応の開発を行った.その結果,安価で入手容易な塩化アリールのカルボキシル化反応がニッケル触媒を用いることにより常温常圧の二酸化炭素雰囲気下で進行することを見出した. 4‐ブチル‐1‐クロロベンゼンを基質とし、条件を検討したところ、配位子としてトリフェニルホスフィン,還元剤としてマンガン粉末、添加剤としてヨウ化テトラエチルアンモニウム(Et4NI),溶媒として1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)を選択した場合に常温,常圧の二酸化炭素雰囲気下でカルボキシル化は進行し,単離収率84%で目的物が得られた.またこの反応は様々な塩化アリールを用いて進行することが分かった.また,臭化アリールやフェノールから一段階で合成可能なアリールスルホナートにも適用できた.さらに,塩化アルケニルを基質として用いても,対応するカルボン酸が良好な収率で得られることを見出した. 反応機構を探索するために,0価のニッケル錯体とクロロベンゼンとの反応により調製した錯体を用いて二酸化炭素との反応を行ったところ,カルボキシル化の進行には還元剤であるマンガン粉末が必要であった.このこことは,系中でのニッケル1価種の発生を示唆しており,より求核力の高いこの化学種が二酸化炭素と反応すると考えている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,この二酸化炭素固定化の駆動力として光エネルギーを利用する新規触媒系の構築にある.初年度は,これらの基礎的知見を得るために,種々の遷移金属触媒を用いるカルボキシル化反応の開発を進めることが目的としていたが,その目的は概ね達成されたと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
光エネルギーを用いる反応開発を実現させるために,以下に示す2つの戦略をとる.1つめは,現在我々が開発した反応系の還元剤(マンガン)を可視光増感剤であるルテニウム錯体やイリジウム錯体と光に置き換えた反応系の開発を行う.2つ目は,励起された光エネルギーを触媒活性中心に効率的に移動させるために,触媒反応において重要な役割を果たす配位子にポルフィリンなどの光受容体を配置する戦略をとる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は.消耗品としては1,000千円,ガラス器具購入費用として300千円を使用する計画である.本研究において取り扱う配位子合成の原料や半導体光触媒の購入費に充てる.これらの購入も見込んだこれらの予算金額は妥当であるといえる. 旅費としては,国内出張費として300千円を計上する.本研究で得られる成果は,日本化学会春季年会や錯体化学討論会,有機金属化学討論会,光化学討論会にて報告する予定である.
|