研究課題/領域番号 |
24655142
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
梅林 泰宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90311836)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオン液体 |
研究概要 |
酢酸イオンからなるイオン液体がCO2を化学的に吸収することが提案され、申請者らは、CO2がイオン液体中で酢酸イオンと化学結合を形成して新たな化合物を生成することを明らかにした。Kolbe-Schmitt反応や類似の挿入反応はよく知られているが、金属イオンが存在しない溶液でCO2 がありふれた酢酸イオンと化学反応することは学術的に興味深い。 今年度、本研究では、① CO2-酢酸イオン化合物の単離・同定、② CO2 との反応性における塩基性の効果、③ CO2 との反応性における溶媒効果について基礎科学の立場から調査し、化学反応による新規CO2 吸収剤の開発や有用化合物への物質変換に資するCO2 の化学反応性を明らかにする。 ①は、酢酸系イオン液体およびそのCO2吸収溶液について高エネルギーX線回折(HEXRD)実験を行い、溶媒の液体構造およびCO2の溶存構造を調査した。HEXRD実験解析モデル探索のためab initio計算を行なったところ、従来知られていない酢酸イオンカルボニル酸素の非共有電子対がCO2炭素近傍のLUMOに電荷移動し、共有結合を生じた新たな安定化学種を見出すことに成功した。この計算で得られた分子構造を基にHEXRD実験を解析したところ、矛盾なく実験を説明できることが明らかになった。 ②については、高圧Raman分校実験の予備実験を行い、CO2吸収量の異なる一連の資料について、通常のRaman測定に加え、等方的Ramanスペクトルを得ることに成功した。今後、S?N比を向上させ、定量実験に研究を進める。 ③について、酢酸イオンを含む水およびアセトニトリル溶液についてCO2吸収の四尾実験を行なった。高圧Ramanセルの耐圧性能を上げることで十分なスペクトルが得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、異動(所属機関の変更)に伴い、年度初めに研究室を異動させ、実験に必要な合成装置、各種測定機器を立ち上げるのに時間を要したものの、交付申請書で計画した実験に関しては、概ね達成できた。 さらに、当初の研究計画にとどまらず、ab initio計算により、従来全く知られていない酢酸イオンとCO2からなる新たな安定化学種の発見は、本研究における特筆すべき成果と言える。 以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き上記①から③の検討を進める。①については、MD シミュレーション解析として、古典的MDシミュレーションにより解析するとともに、第1原理MDシミュレーションについても検討する。②については、酢酸イオンにフッ素或いは塩素原子を導入した一連の酢酸イオン誘導体からなるイオン液体を新たに合成するとともに、その酸塩基性評価、ならびに、CO2吸収能評価を行う。さらに③として酢酸イオンを荷電官能基とするポリマーに研究を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策に必要な試薬・具お西洋ガラス器具など主として消耗品の購入、および学会やSPring-8やJ-PARCなど測定旅費に当てる。
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