研究課題/領域番号 |
24655142
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
梅林 泰宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90311836)
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キーワード | イオン液体 / 高圧FT-IR / 高圧Raman |
研究概要 |
酢酸イオンからなるイオン液体がCO2を化学的に吸収することが提案され、申請者らは、CO2がイオン液体中で酢酸イオンと化学結合を形成して新たな化合物を生成することを明らかにした。Kolbe-Schmitt反応や類似の挿入反応はよく知られているが、金属イオンが存在しない溶液でCO2 がありふれた酢酸イオンと化学反応することは学術的に興味深い。 本研究では、① CO2-酢酸イオン化合物の単離・同定、② CO2 との反応性における塩基性の効果、③ CO2 との反応性における溶媒効果について基礎科学の立場から調査し、化学反応による新規CO2 吸収剤の開発や有用化合物への物質変換に資するCO2 の化学反応性を明らかにする。 ①は、酢酸系イオン液体およびそのCO2吸収溶液について高圧CO2下FT-IR測定を行い、CO2の溶存構造を調査した。IRスペクトルのCO2圧力依存性から酢酸イオン-CO2間に共有結合を生じた新たな化学種を見出すことに成功した。 ②については、これまで不可能と考えられた非プロトン性イオン液体のpH測定に成功し、プロトン性イオン液体と共に、CO2吸収において最も重要な因子と考えられているイオン液体の塩基性についてブレンステッド酸の観点から定量的な評価が可能になった。 ③について、酢酸イオンを含むグライム類溶液についてCO2吸収の予備実験を行なった。高圧Ramanセルの耐圧性能を上げることで十分なスペクトルが得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Raman分光計の更新に伴い、今年度予定していたRamanセルの製作を見送ったものの、交付申請書記載の計画を概ね実行できた。 特に、非プロトン性イオン液体の塩基性に関してブレンステッド酸の観点から従来の翡翠溶媒とも比較できる自己解離定数の評価に成功したことは大きな成果と言える。 次年度は、最終年度にあたり、Raman/IR振動スペクトルならびに熱力学に基づく塩基性の定量評価によりCO2の化学吸収に関する基礎科学を確立できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、計画通りに研究を進める。特に、①については、MD シミュレーション解析として、古典的MDシミュレーションにより解析するとともに、第1原理MDシミュレーションについても検討する。②については、酢酸イオンにフッ素或いは塩素原子を導入した一連の酢酸イオン誘導体からなるイオン液体を新たに合成するとともに、その酸塩基性評価、ならびに、CO2吸収能評価を行う。さらに、③として、酢酸イオンを荷電官能基とするポリマーに研究を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請にしたがって、最終年度も研究経費の配分を予定している。さらに、高圧Raman・X線測定セルの製作を計画していたものの、Raman分光計本体の更新を行なったため、新規Raman分光計に適した仕様変更が必要となり、最終年度に製作する。 物品費:1,607,651円(高圧Ramanセル), 旅費:500,001万円, 謝金など:0 , その他:0
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