研究概要 |
本研究では大腸菌体内で構成された蛋白質-tRNA複合体を用いて,目的の成熟tRNAを簡便かつ高純度に調製する系を構築する事を目指す. 平成24年度までに,複数種の蛋白質-tRNA複合体が得られていたが,平成25年度は,セレン導入蛋白質とtRNAの複合体に注目し,その解析を目指した.この蛋白質はtRNA(Gln),tRNA(Glu),tRNA(Lys)を基質とするため,これらの共発現系を構築した.tRNAの発現ベクターにはpET22b,蛋白質の発現にはpCOLAを用いた.大腸菌中で形成した複合体を精製し,Urea PAGEにより解析した結果,非常に高純度のtRNAが得られた.詳細についての知見を得るために,蛋白質-tRNA複合体の結晶化を行ったところ,PEG3350を含む条件下で結晶が得られた.クライオプロテクタントの添加などの結晶化条件の最適化の末,4Åの分解能のX線回折データを収集する事に成功した.格子定数はa=90, b=104, c=130 alpha=90, beta=108, gamma=90である事がわかった.分子置換法による構造解析を試みたが,有意な解は得られなかった.解析に向け,今後,良質な結晶を得る必要がある. 期間全体を通し,TmcA(K205A)変異体を用いたtRNA(Met)の調製系,およびセレン導入蛋白質を用いたtRNA(Gln),tRNA(Glu),tRNA(Lys)の調製系を構築した.これらのRNAはいずれも,Niアフィニティクロマトグラフィーを用いて大腸菌破砕液から簡便に得る事ができ,本研究の有用性が示された.さらに,生体内から得られたこれらの成熟tRNAの詳細な解析に向け,各々のtRNAの結晶化および初期X線回折データの収集を行った.構造解析には至らなかったが,結晶学的パラメータを決定する事ができた.詳細な構造解析に向け,今後は,これらの結晶の改良を進める必要がある.
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