研究課題/領域番号 |
24655147
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小松 徹 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (40599172)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 創薬化学 / ケミカルバイオロジー |
研究概要 |
平成24年度は,chromophore-assisted laser scaring (CALS) 法の確立に向けて,光増感剤の精査をおこない,光増感反応によるタンパク質の酸化修飾の様子を明らかにする基礎研究と,その応用に向けた実験系の構築をおこなった.以下に,それぞれの概要について説明する. (1) 光増感剤の精査:光増感剤を共有結合させたタンパク質のSDS-PAGEを用いた解析により,光照射依存的な分子量の変化が観察され,タンパク質のペプチド鎖の切断が起きていることが確かめられた.これを指標として,様々な光増感剤を用いた場合の酸化修飾の度合いを調べ,最も優れた光増感剤としてxanthene骨格を有する蛍光団を選択し,以降の検討をおこなった. (2) タンパク質の酸化修飾の解明:SDS-PAGEによる分子量の変化の検出に加え,より詳細なタンパク質の酸化修飾の様子を明らかにするため,酸化修飾によって生じる特異的なアミノ酸残基を化学修飾し,免疫学的手法によって高感度に検出する手法を確立した.これによって,より温和な光照射条件によって生じるタンパク質の酸化修飾を高選択的に検出することが可能となり,光増感剤の結合の有無を酸化修飾の違いによって見分けることに成功した.また,ここで生じる酸化修飾タンパク質をペプチドマスフィンガープリンティング法によってアミノ酸レベルで解析することにより,酸化修飾がどのように起こっているかを分子レベルで明らかにした. (3) 応用に向けた実験系の構築:上記検討よりCALS法の有用性が示唆されたことを受けて,応用に向けた実験系の構築を開始した.具体的には,申請書に記載のとおり,モデル系として,細胞接着因子であるインテグリンと薬剤の相互作用を検出することができるかを確かめるため,インテグリンに選択的に結合する薬剤の精査と,その評価系の確立をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画どおり,実験系の立ち上げをおこない,タンパク質の酸化修飾を評価する各種実験をおこない,応用を進めていく上で必要となる基礎知識を蓄積することができた.特に,研究実績の概要に述べたとおり,(1) 当初予定していたタンパク質の分子量の変化による検出に加え,酸化修飾によって生じる特異的なアミノ酸残基の化学修飾による免疫学的手法を用いた検出法を新たに導入することにより,高い精度,感度をもって光増感剤によるタンパク質の化学修飾を検出することを可能にしたこと,(2) ペプチドマスフィンガープリンティング法を用いることによってタンパク質に起きている変化をアミノ酸レベルで解析することが可能であったこと,は,研究の過程でおこなってきた工夫であり,タンパク質の酸化修飾の理解における新たな方法論を提案するものにつながると考えている. また,この系を実際のタンパク質の機能の解明につなげる応用研究は平成25年度以降の予定としていたが,一部の実験系については,既に立ち上げを開始しており,今後,本実験系が確立された場合に,速やかにこれを応用することが可能であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) タンパク質の酸化修飾に関するデータの整理と一般論への展開:初めに,タンパク質の酸化修飾に関して得られた膨大なデータを整理し,統合的な理解を得ることを目的とする.タンパク質レベル,アミノ酸レベルの酸化修飾の両者において,現在までに多くのデータが得られているが,その反面,その中から必要な情報を選択し,応用性の高い一般論を導き出すことは,今後,本実験系を幅広い目的に利用していく上で必要不可欠なものである. (2) 実験系の有用性の確認:先述のとおり,本実験系がタンパク質と薬剤の相互作用の様子を解明する目的で有用であることが示唆されているが,これを,既存の実験系との比較の形で確かめる.具体的には,細胞接着因子のインテグリンと薬剤の相互作用の検出において,既存の手法であるphotoaffinity-labeling (PAL) 法との比較を,(1) 感度,(2) 選択性,(3) 汎用性の高さ,の3点を中心に比較する実験をおこなう予定である. (3) 実験系の応用:本実験系を有用なものとして確立することと併せて,実際にこれを利用して新たなタンパク質の機能を明らかにする研究を進めていく.これについては,(1),(2)によって得られる知見から最適な実験系を決定していくことになるが,現在の予定では,申請書に記載のとおり,新規細胞接着因子の探索を中心として研究を展開していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の遂行に必要な機器類は昨年度の段階で揃えられており,今年度は実際の生体サンプルを用いた実験に用いる試薬類が主な研究費の用途となる.申請書の段階では二次元電気泳動装置の購入を予定していたが,現在用いている酸化タンパク質検出法では,一次元の電気泳動でも十分な精度をもって酸化タンパク質の解析が可能であるため,購入を見送ることとした.生体サンプルを用いた実験系の試薬類は昨年度よりも更に多くのものが必要となることが予想される.また,得られた研究成果の発表のため,国内外の学会に参加し,意見交換と本実験系の応用の模索を進めていく予定である.
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