フッ素を検出核種とするMRIは、生体バックグラウンドの低さから生体分子イメージングの新たなモダリティーとして期待されている。しかし、その検出感度の低さが実応用のボトルネックとなっている。そこで本研究では核酸類の生体内可視化を目指し、狙った位置およびタイミングで超偏極状態のプローブを誘導することで高感度検出する新しいイメージング法の創出を目的とする。光ライゲーションとして実績のあるビニルウリジン骨格を参考に光ライゲーション可能なフッ素含有ヌクレオシド誘導体を設計し、ジフルオロベンゼンを主骨格とする新規光応答性フッ素含有ヌクレオシドの合成を行った。ジフルオロベンゼンとグリカールのC-C結合形成反応において各種条件検討(触媒、配位子、保護基、温度等)を行ったところ、Palladium acetate (II)、Triphenyl arsineの触媒系が最も有効であることを見出した。その際、思いがけず立体選択的にβ体ヌクレオシド合成が可能であることも見出した。超偏極状態の寿命測定を行うまでには至っていないものの、実際にフッ素含有ヌクレオシドの合成に成功した。また19FーNMRと蛍光イメージングによりDNAを選択的に検出可能な新たな分子プローブの開発も行った。具体的には、高い検出感度を持つDNA検出用蛍光性プローブとして知られる、2重鎖DNAの塩基対間にインターカレートするアクリジンオレンジ、および2重鎖DNAの 副溝のアデニン及びチミンが連続する領域に結合するDAPIを基本骨格に、19F源としてトリフルオロメチル基を持つ新たなDNA検出プローブの開発を試みた。合成したアクリジンオレンジ骨格プローブにおいてマルチモードイメージング(蛍光ならびにNMR)が可能であることを見出した。
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