研究課題
褐色脂肪細胞で蛍光性サーモセンサー(TWIX)を発現させるために、TWIXをコードするアデノウィルスを昨年度に作製した。本年度は、ミトコンドリアに発現するTWIX-mitoを褐色脂肪細胞に発現させて、各種刺激に伴う熱産生を評価した。まず、ミトコンドリア脱分極剤として知られるCCCPを投与したところ、温度上昇に相当する蛍光変化が得られた。また、褐色脂肪細胞はUCP1の活性化に伴い熱産生を起こすと知られているので、UCP1の活性化に必須な遊離脂肪酸の産生を引き起こすβアドレナリン受容体刺激を行ったところ、同様に温度上昇に相関する蛍光変化が得られた。このことから、褐色脂肪細胞における熱産生の可視化に成功したと言える。近年、骨格筋も熱産生を起こすことが報告された。しかし、骨格筋からの熱産生に関しては、主に膜画分を用いた生化学的な方法で評価されており、細胞内での寄与に関しては意見が割れていた。そこで、筋繊維芽細胞であるC2C12に小胞体に発現するTWIX-ERを発現させて、筋管細胞へと分化させて熱産生を評価した。骨格筋においては、小胞体に発現するCa2+ポンプであるSERCAのATPase活性が熱産生を引き起こすと考えられている。そこで、TWIX-ERを発現させた筋管細胞にSERCA阻害剤を添加したところ、温度降下に相当する蛍光変化が得られた。一方で、SERCA阻害剤をwash-outした際には、元の蛍光状態に戻った。すなわち、筋管細胞におけるSERCAを介した恒常的な熱産生を可視化できたと考えている。
すべて 2013
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Nature Methods
巻: 10 ページ: 1232-1238
10.1038/nmeth.2690