分化や疾患など生命現象に関わる遺伝子群を網羅的に同定することは、生命現象のメカニズムの解明や疾患の新たな治療法を開発する上で非常に重要である。そのような遺伝子群を網羅的に同定する手法の開発のために、本年度は、継続して、ポジティブコントロールとして作用を示す、特定の遺伝子発現を制御できるサンプルの作製を行った。このサンプルを用いることにより、どれくらいの濃度で存在すれば、その機能を発揮できるかについて重要な情報を得ることができる。まず、昨年度作製した4種類のサンプルとは異なるサンプルをさらに5種類作製した。すでに当研究室で確立された方法にもとづいて、化学合成したフラグメントを出発物質として、それぞれのサンプルを3ステップで作製した。最終的に得られた追加の5種類を加えた、全9種類のサンプルを個別に、標的遺伝子発現を定量的に評価できるモニター系と同時に動物細胞に導入した。導入後1日以上において経時的に細胞を回収し、細胞抽出液を調整した。次に、各々の細胞抽出液中の標的遺伝子の発現量を酵素的に定量した。その結果、今回新たに作製した5種類の中に、以前作製した中でベストのサンプルよりもより活性が高いものが見られた。同じ実験を複数回繰り返し、この結果の再現性を確認した。さらに、細胞内でのサンプルの存在量を定量・比較したところ、今回見い出したサンプルはほかのサンプルに比べて特に多いわけではなく、むしろ少ない傾向が見られた。したがって、このサンプルが最も高い活性を有することを確認できた。
|