研究課題/領域番号 |
24655156
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀 弘幸 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20256960)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酵素 / 核酸 / RNA / ゲノム / 遺伝子 |
研究概要 |
本研究は、多くの真正細菌が保持する葉酸依存性RNAメチル化酵素が基質であるメチレテトラヒドロ葉酸を奪うことにより、DNA複製系に影響を及ぼしているのではないかという仮説を検証することを最終目標に据えている。 平成24年度は、その初年度であるが、葉酸依存性RNAメチル化酵素のRNA基質認識機構を明らかにし、非常に幸いなことに、国際的学術誌(J. Biol. Chem.誌)に投稿論文を受理されるに至った。着実に第一目標をクリアしたと言える。 ついで、葉酸依存性RNAメチル化酵素の遺伝子破壊株の作成に成功し、チミジル酸合成酵素の精製法を確立した。また、セリンハイドロキシメチルトランスフェラーゼを用いた二段階酵素活性測定法が、チミジル酸合成酵素の酵素活性測定法にも利用できることを確認することができた。ここは、研究計画では難所の一つと想定していたので、短期間に酵素活性測定の最適条件を探し当てれたことは、予想以上の進捗である。さらに、生育フェーズごとに、葉酸依存性RNAメチル化酵素が産生するtRNAの5-メチルウリジンの含有量を測定したところ、ほぼすべての生育フェーズで100%近いメチル化状態であることを確認することができた。この結果は、対数増殖初期に存在する葉酸依存性RNAメチル化酵素の存在量でtRNAをメチル化するのに十分であることを示しており、対数増殖後期に本酵素mRNA量が上昇し、過剰な葉酸依存性RNAメチル化酵素が生産されているのではという冒頭の仮説と矛盾しない結果である。平成24年度末には、これら研究の進捗を受けて、予定を前倒しし、葉酸依存性RNAメチル化酵素、チミジル酸合成酵素、セリンハイドロキシメチルトランスフェラーゼを抗原とするポリクローナル抗体の作成に取りかかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記述したように、本研究課題の成果の一部を初年度であるにも関わらず、国際的学術誌に投稿論文として受理されるに至った。葉酸依存性RNAメチル化酵素の基質tRNA認識機構の解明は、海外のグループとの競争になっていただけに一本取った形になっている。なお、葉酸依存性RNAメチル化酵素を保持する真正細菌には、破傷風菌やレンサ球菌など、感染性バクテリアが多く含まれており、この研究成果は抗菌剤開発や感染性微生物防除の分野にも貢献しうるものである。次いで、葉酸依存性RNAメチル化酵素の遺伝子破壊株の作成に成功した。また、チミジル酸合成酵素の活性測定系にセリンハイドロキシメチルトランスフェラーゼを使用した二段階酵素活性法が利用できることを確認することができた。研究計画段階では、遺伝子破壊株の作成が根本的にうまくいかない、チミジル酸合成酵素の活性測定がうまくいかないなどの困難もありえると考えていただけに、ごく短期間で、これらの部分を突破できたのは望外であった。さらに、tRNA中の5-メチルウリジンの量をきちんと定量することができ、最終目標とする仮説と矛盾しないことが確認できた。 これらの進捗を受け、平成25年度に予定していた抗体作成を平成24年度末に着手することができた。 総じて言えば、大きなトラブルもなく、当初計画を2~3か月、前倒しして研究は進んでいるので、「当初の計画以上に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、ポリクローナル抗体を準備し、生育フェーズに合わせて、葉酸依存性RNAメチル化酵素、チミジル酸合成酵素、セリンハイドロキシメチルトランスフェラーゼの細胞内存在量の変動に着手する。特に、どのタンパク質が細胞内のテトラヒドロ葉酸量の制御因子なのかまで明らかにすることができれば、本研究計画の骨子の部分は達成できたことになる。おそらく、そう単純ではなく、細胞内に存在する葉酸関連化合物の量を正しく測定する必要が生じるのではないかと考えている。そのためには、当研究室にはない、測定システムを立ち上げる必要があるだろう。また、DNA合成量を正確に見積もる手法の開発も必要になるかもしれない。つまり、タンパク質群の動態を明らかにした上で、何を測定すべきかを考え、測定手法を考案する方向で、研究計画を立案している。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、消耗品費として支出する予定である。内訳は、ポリクローナル抗体の作成、酵素活性測定用標識化合物の購入、培養用器具・培地代、一般試薬、分子生物学試薬などである。国内学会(分子生物学会)において、研究成果の一部を発表するため、国内旅費を申請する。平成25年度は、論文投稿を予定しておらず、英文校閲費や論文掲載料は申請しない。
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