研究実績の概要 |
1, ヒト型ナノ抗体の構造制御:マウス腹水からProtein A精製したモノクローナル抗体を二次元電気泳動すると、Ureaで変性しているにも関わらず、重鎖・軽鎖ともに同一分子量でpIの異なる多くのスポットが検出される。本研究で取り扱っているのは、未変性状態の抗体鎖であることから、構造多様性に富むことは容易に想像出来、完全抗体から分離・精製した場合、遺伝子工学的に単独で発現させた場合、ともにこれを示唆する傾向が現れていた。昨年の検討で、精製過程で金属イオンを用いることで、大腸菌で発現・精製したナノ抗体の構造均一化傾向が認められたことから、金属イオンの効果について重点的に検討し、金属イオンの取り込みでナノ抗体の電荷が均一化されることが分かった。 2, 軽鎖定常領域ドメイン(CR)の発現:現在取り扱っているナノ抗体は、抗体サブユニットであり、単独で取り出すことで完全抗体では見られない機能を示している。抗体ドメインの中で重鎖定常領域には、エフェクター作用という役割があるが、軽鎖定常領域の役割は分かっていない。また、(1)の検討において、金属イオンが定常領域に取り込まれている可能性が示唆されたことから、定常領域ドメインを単独で発現させた場合の構造多様性や機能についての検討を進めた。 3, ナノ抗体によるがん細胞傷害性試験:本研究で取り扱っているナノ抗体は、複数のがん細胞に対して効果を示すことが分かっているので、上皮系の細胞を用いたスクリーニングを行った。 4, BBB透過性試験:(1)(2)の検討によりナノ抗体のサイズ制御に関して、多くの知見を得た。これらを踏まえてナノ抗体のBBB透過性試験に着手しており、現在は予備的な実験を進めている。
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