研究実績の概要 |
黒色メラニンは炎症を抑制するレドックス制御物質として働くのか(抗酸化),または複合的な要因で炎症を増悪させる疾病成因(酸化ストレス)なのか,相反する2つの着眼点から黒色メラニン形成とレドックス制御との関連性を検討した。反応中間体の放つ発光(蛍光)の分光データから励起メラニンの存在と,脂質などの生体構成成分とメラニンとの反応生成物の定性分析データから活性種(発光種)が起因するリノール酸の酸化反応物を発ガン性リスク因子候補として組成解析を試みた。 一方,黒色メラニンの形成初期反応(チロシナーゼ反応)の過程で生成する活性酸素を再度検討し,特にヒドロキシルラジカル(・OH)に着目した実験の結果,・OH生成を抑制しつつ消去するような生体防御機構の可能性を示した(M. Tada, M. Kohno, Y. Niwano. Alleviation effect of arbutin on oxidative stress generated through tyrosinase reaction with L-tyrosine and L-DOPA, BMC Biochem, 15;23 (2014))。また,メラニン合成細胞であるメラノサイトのUVAに対する応答からin situでの・OH生成を確認している。 発ガン性リスクを低下させるためには,黒色メラニン形成をコントロールすること,つまりレドックスを制御することで抗酸化機能を発揮するためのメラニン量をキープすることが大切である。メラニン形成後の作用として,一般的に知られているUV吸収での皮膚保護作用のみならず,真皮を構成している脂質やタンパク質(コラーゲンなど)の酸化的損傷抑制作用と炎症軽減作用との関連性を追求することが重要である。今後,メラノサイトの細胞シートや脂質モデル系でのレドックス制御因子となる活性種の分析を考えている。
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