研究課題/領域番号 |
24655160
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮本 憲二 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60360111)
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研究分担者 |
吉田 昭介 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (80610766)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱駆動型反応 / エステラーゼ / 好熱性酵素 |
研究概要 |
本申請では、超好熱性酵素の活性部位を「熱に強い不斉な空間」ととらえる。そして、本来その酵素の基質ではないが、活性部位に結合する様な化合物をデザインし、不斉空間を反応場として様々な熱駆動型反応を実現することを目的としている。 具体的には、超好熱性エステラーゼの基質にはならないが、活性部位に結合するような化合物を用意する。そして、活性部位内へのバインディングと、触媒残基との相互作用によりある程度の活性化を行う。しかし、このままでは反応は起こらないので、超好熱性酵素の構造が保たれる温度である90℃程度まで加熱し、反応を誘発する。 我々は既に、アリールメチルマロン酸ジエステルに高温条件で好熱性エステラーゼを作用させることにより、自発的脱炭酸反応を経由し、アリールプロピオン酸を生成する不斉ドミノ型反応を達成している。このドミノ型反応では、最初にマロン酸ジエステルの立体選択的加水分解反応起こり、ハーフエステルが生成する。次いで、活性部位内でハーフエステルの熱駆動型脱炭酸反応が起こる。最後に生成したエステルがエステラーゼによって加水分解されて光学活性なカルボン酸が生成する。そこで、加水分解活性の消失したエステラーゼを作成し、高温条件下でハーフエステルに作用させると酵素の活性部位内で脱炭酸反応だけを行わせることができるのでは無いかと考えた。まず、この化合物と酵素をモデルとして、熱駆動型反応を実現する。そして、酵素を用いる熱駆動型ベックマン転位反応等への応用展開を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は既に、マロン酸ジエステルに高温条件で好熱性エステラーゼを作用させることにより、自発的脱炭酸反応を経由する不斉ドミノ型反応を達成している。しかし、その生成物の光学純度は40%e.e.程度と低いものであった。そこでまず、活性部位周辺に変異を導入したライブラリーを構築し、その中から選択性の向上した変異体をスクリーニングした。以上の様なコンセプトにより作成した147変異体の加水分解活性を確認したところ、全ての変異体が加水分解活性を示した。次いで、ドミノ型反応を試したところ、69変異体で反応の進行が確認された。そして、これらの光学純度を測定したところ、野生型より選択性が大幅に向上(66~80%e.e.)した6変異体(A179M/L198Y、A179M/L198E、I203R、A179K、I203E、A179M/L198S)を得ることに成功した。この成果は、Tetrahedron Lettersに投稿・受理された。 また、好熱性エステラーゼを用いた新規ドミノ型反応を検討した。具体的には、化学合成したアセチレンマロン酸ジエステルにエステラーゼを作用させ、加水分解と脱炭酸の後に、自発的な異性化を起こさせて、光学活性なアレンを合成することを試みた。その結果、定量的な収率で目的とするアレンを得ることに成功したが、生成物の光学純度は4%と低いものであった。また、マロン酸ジエステルでは無くケトエステルに作用させて、ドミノ型反応を試みた。その結果、目的とするケトンが得られ、ドミノ型反応の進行を確認した。しかし、生成物はラセミ体であった。この様に生成物の光学純度は低いものの、様々なタイプの熱駆動型ドミノ型反応に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度取得した立体選択性が向上した変異体と野生型に対して変異を導入し、エステルの加水分解活性が消失した変異体を作成する。具体的には、加水分解に必要不可欠な残基であるAsp、His、SerをAlaに置換した変異体を作成する。これの残基は、触媒3点セットを呼ばれており、加水分解には必要不可欠出あることが知られている。これらの変異体を作成し、別途合成したマロン酸のハーフエステルに高温条件で作用させることにより、加水分解活性の消失したエステラーゼによる熱駆動型脱炭酸反応を実現する。そして、取得した変異体の中から反応性と立体選択性の良いものを選択する。さらに、得られた変異体の情報を統合的に解釈した配列の最適化と、反応条件の最適化を行う。 好熱性エステラーゼに様々なオキシムを作用させて加熱し、ベックマン転位を試みる。基質としては、アセトフェノンオキシムやシクロヘキサノンオキシムを考えている。また、酵素源としては、ゲノム既知の好熱性アーキアも利用する。具体的にはアーキアの培養を行い、その菌体から調製した無細胞抽出液とオキシムを高温条件で作用させてベックマン転位を試みる。もし、反応の進行が確認できた場合は、ベックマン転位の進行を指標に酵素精製を行い、N末端配列から目的酵素の遺伝子を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、変異導入とシークエンスによる確認が予定していたものより少なかったため、当該助成金が生じた。本年度は、エステラーゼの活性を消失するための変異導入やシークエンスでの確認を大量に行う必要がある。また、成果発表のための国内出張料費が必要である。
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