(平成26年度)平成25年度までに問題になっていた糖結晶の大型化については、倒立型顕微鏡を用いた結晶成長のその場観察による詳細な条件最適化を可能にし、また、過飽和液表面での糖の析出を油層により防ぐことで、2mmx5mm程度までの単結晶成長を実現した。得られた単結晶について評価するために光ファイバを用いた1.5μm帯でのTHz-TDS系を構築し、反射型、および、透過型での評価を実施した。 (研究期間全体)糖結晶作製の際の種結晶作製に必要なモニタリングシステムとして光ファイバを用いたOTDRを構築した。その結果、種結晶作製時のファイバ先端での糖析出ための最適条件が見出された。種結晶を用いた単結晶成長においては、過飽和液表面の油層によるキャッピングが有効であり、また、55℃での成長が最も適していることを見出した。この実験遂行の際、原料となる糖粉末中での構造異性体割合と微結晶サイズをTHz-TDSを用いることで非破壊で精度良く同定できることを見出している。得られた大型単結晶を用いてTHz波帯での特性を評価し、1.37THzにピークを持つ吸収が粉末に対して著しく減少することを見出し、数値処理による分析の結果、結晶サイズ増加に伴う1.34THzにピークをもつ放射の増加が確認された。これらの結果を基に、構築した1.5μm帯でのフェムト秒レーザを光源とする時間領域分光系のエミッターとして作製した糖結晶を用いて評価したところ、水和物、無水物ともにこれまでのところInAs系光伝導アンテナで検出できる程度のTHz波は得られていない。その原因として用いた検出器の比感度の低さと結晶中のフォノンとレーザの繰り返し周波数の不整合が挙げられ、今後検出方法の変更を計画し継続検討する予定である。
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