研究概要 |
太陽光の届かない深海底において, 地球内部から湧き出る還元物質が生物学的CO2固定のエネルギー源となっており, 深海バイオマス生産の約50 %をFe2+が担っていると考えられている。Mariprofundus ferrooxydans (M. ferrooxydans) はそのような環境から単離された鉄酸化細菌であり, Fe2+を電子源としてCO2固定を行う。ここで, 電子源として用いられる鉄イオンの標準酸化還元電位は+0.77 Vである。すなわち, CO2固定に必要な還元力を生産するために, M. ferrooxydansは体内において1 eV程度の電子の昇圧を行っていることが予測される。そこで本研究では, M. ferrooxydansの持つ高いCO2固定能と昇圧機構に着目し, 生きた微生物を電極触媒として用いた低電圧CO2固定システムについて検討を行った。 初めに、微生物存在下、定電位固定条件における電流-時間曲線の測定を行った。還元電流の増加が100時間後から顕著となった。また、多糖蛍光試薬を用いて電極表面の蛍光顕微鏡観察を行ったところ、電極表面におけるバイオポリマー生成を観測した。 引き続き、電極材料のリニアスイープボルタンメトリー測定を行った。その結果、+0.63 Vより還元電流が観測された。これはM. ferrooxydansが+0.63 Vの電子をCO2固定のためのエネルギー源として利用していることを示している。 この結果は, M. ferrooxydansの昇圧機構に着目することで, 水を電子源とした連続的なCO2還元反応が200 mV程度の極低電圧によって進行可能であることを示している。
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