研究課題/領域番号 |
24655170
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
斉藤 秀俊 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (80250984)
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研究分担者 |
大塩 茂夫 長岡技術科学大学, 工学部, その他 (90160473)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | SrO / MgO / 高圧相 / 還元焼成 / マッフル炉 |
研究概要 |
高圧相SrOの合成を常圧の電気炉で実施した。常圧での合成方法を金属EDTA(エチレンジアミン四酢酸塩)錯体の分解過程と還元焼成過程にわけて説明する。 まず、錯体の分解過程を調査するため、金属EDTA錯体として出発原料に粉末Sr-EDTAを選択した。これをマッフル炉で大気中800℃で2時間加熱し分解したところ、粉末のアモルファス物質が得られた。アモルファス物質はSrOであると推測されるが、結晶構造解析ができなかった。合成後にマッフル炉中で冷却すると冷却後に大気中にて一部が結晶化し、それらは炭酸ストロンチウムあるいは水酸化ストロンチウムであることがわかった。 還元焼成過程では、SrOアモルファス物質を主とする粉末試料をMgO板上に積載して、4%H2-96%Ar雰囲気にて還元焼成炉(現有)にて1300℃で還元焼成した。2時間の還元焼成のあと、4%H2-96%Ar雰囲気にて徐冷した。その結果MgO板上にて粉末が溶融した固体が形成された。この固体の組成分析を行ったところ、表面ならびに断面においてエネルギー分散型X線法による元素マッピングを得たところ、Mgは検出されずSrとOからなる固体であることがわかった。さらに、X線回折の結果、この固体は結晶であり、SrOの8配位構造で指数付けできることがわかった。SrOの8配位構造は高圧でしか得られなかった立方晶系のCsCl型(B2)構造で、8配位構造が常圧で得られることがわかった。さらに、厳密にはこの構造は立方晶ではなく、正方晶であることがわかった。 焼成温度を1000℃ー1300℃まで100℃きざみで変えて合成を行ったものの、高圧相は1300℃より低い温度では形成されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SrOの8配位構造を再現性よく得られる合成条件を明らかにすることができた。焼成温度を1000℃ー1300℃まで100℃きざみで変えて合成を行ったものの、高圧相は1300℃より低い温度では形成されなかった。これまで高圧相としては立方晶系のCsCl型(B2)構造が報告されていたが、それに対して本研究で常圧で得られた相は、8配位構造であるものの、厳密にはこの構造は立方晶ではなく、正方晶であることがわかった。 MgOの存在しない条件下ではSrOの8配位高圧相を得ることができず、エピタキシャル成長基板の選択の道が閉ざされた。しかしながら、MgOに対してSrOがエピタキシャル成長する可能性が残されており、MgO単結晶基板上のエピタキシャル成長を実現するための装置設計に入ったところである。
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今後の研究の推進方策 |
当初、単結晶引上げ装置を製作し、現有の管状炉型還元焼成装置より小さな還元雰囲気MgO触媒式焼成装置一式を準備する予定であった。しかしながら、MgOと共存状態での単結晶引上げ方式の実現が難しくなったことから、MgOを基材として化学気相析出法とフレームでポジション法の2つを利用してSrOの合成を行い、単結晶SrOを得ることにした。単結晶SrOを得た後は、光学特性:結晶配向をX線回折法により、密度をX線反射率法で確認したあと、エリプソメータ(現有)にて屈折率や消光係数の計測、分光器により2次ならびに高次の非線形光学発光を確認する。電気特性:結晶に金を蒸着し、対向電極を形成する。その電極を利用して、抵抗率、誘電率、高周波特性、P-Eカーブを計測する。機械特性:現有のピコデンター(pmの単位で押込み深さが計測できる硬さ計)を利用して、硬さ、ヤング率、流動特性の計測を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
現有の管状炉型還元焼成装置より小さな還元雰囲気MgO触媒式焼成装置一式は予定通りくみ上げるが、単結晶引上げ方式ではなく、CVD法あるいはフレームでポジション法を選択する。そのため、研究費の仕様計画には、装置製作にかかる部品において若干の変更がある。
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