研究課題/領域番号 |
24655171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下間 靖彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40378807)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 偏光 / 石英ガラス / GeO2ガラス / 超短パルスレーザー / 構造性複屈折 / 分光ポラリメーター / イメージング / フィルター |
研究概要 |
フェムト秒レーザーを石英ガラス内部に集光し、その焦点近傍に誘起される局所的なナノ周期構造由来の複屈折制御を試みた。具体的には複屈折を発現させた領域を積層することにより、複屈折による位相差に加成性が成り立つことを確認し、さらにパルスエネルギーをはじめとして、描画速度、偏光方向、波形整形したフェムト秒パルス等の諸条件と誘起される複屈折の大きさとの関係について詳細に調べた。レーザー照射条件(パルスエネルギー、描画速度)と複屈折による位相差とのそれぞれの関係は、パルスエネルギーが大きいほど、描画速度が遅いほど、位相差は大きくなった。パルスエネルギーが2 µJ以上の場合、照射領域がわずかに着色し、258 nm励起の蛍光スペクトルから、ODC(II)とNBOHC等の欠陥に由来する着色と考えられた。また、ダブルパルス列に波形整形し、投入全エネルギーを同一とした方が、通常のシングルパルス列より位相差が大きくなった。これは、第1パルスにより励起されたプラズマ電子の緩和時間(~数ピコ秒)以内に次の第2パルスが到着し、逆制動放射過程を経たプラズマ電子の励起がシングルパルス列に比べて促進されるためと考えた。加えて、GeO2ガラスにおいても、フェムト秒レーザーを集光照射することで、ナノ周期構造の形成が示唆された。照射パルスエネルギーが120 nJ以上の場合、O2分子によるものと考えられる1555 cm-1付近にピークが観察され、照射部は金属Geと酸素ガスに分解されていると推測された。一方、120 nJ以下の照射エネルギーの場合、その集光部に照射レーザーの偏光に垂直な方向に遅軸が現れており、石英ガラスで見られた構造性複屈折と同様の現象が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標である超短パルス光のパルス成形・制御システムを開発した。具体的には、偏光による物質との相互作用を制御するとともに、誘起される構造性複屈折による位相差に加成性が成り立つことを確認した。また、レーザー照射条件(パルスエネルギー、描画速度)と複屈折による位相差との関係を系統的に調査した。来年度に実施予定の偏光イメージングセンサーとして機能させるための最適な作製条件を見出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに系統的に調査した偏光依存なの周期構造の最適な作製条件に基づいて、可視域のどのような波長領域で機能するかを明らかにするため、局所的な複屈折の波長依存を体系的に調べる。さらに、石英ガラス内部に複屈折の遅軸方向を変えた偏光子アレイについて、サイズを変えながら形成する。最終的に、予め偏光子アレイを書き込んだ石英ガラスを撮像素子上面に張り付ける、または撮像素子上面に石英ガラスの張り付け後、偏光子アレイを書き込み、最終的に偏光イメージングセンサーを完成させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
石英ガラス基板の購入、GeO2ガラス作製のための原料購入に使用する。また、本研究で得られた成果を対外発表するための旅費に使用する。
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