研究課題/領域番号 |
24655173
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
堀田 収 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00360743)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発光トランジスタ / 金属酸化物半導体 / AZO / 浮遊ゲート |
研究概要 |
浮遊ゲート発光トランジスタデバイスのプロトタイプを確立するために、以下のアプローチを通して研究を遂行した。 「浮遊ゲート」を電極に直接接触せず、有機半導体層に完全に覆われるという広義の意味に捉えてデバイスを開発した。本年度は簡易なデバイス構成を可能にする薄膜デバイスを作製して動作特性を調べた。即ち、トランジスタのゲート絶縁膜(シリコン酸化膜)上に金属酸化物半導体(酸化亜鉛)からなる薄膜をスパッタなどの手法によって形成し、浮遊ゲートを構成した。この浮遊ゲートを覆うように有機半導体薄膜を真空蒸着によって形成した。有機半導体として、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)を選択した。浮遊ゲートに導電性をもたせるために、酸化亜鉛にアルミニウムをドープした材料(AZO)を用いた。 以上のようにして作製したデバイスに関して、デバイス駆動条件を探り、デバイスの発光強度および発光位置を調べた。ソースおよびドレイン電圧およびゲート電圧を様々に変えてデバイスの電気特性を測定・解析した結果、通常のトランジスタデバイスと比較してゲート電圧の変調によるドレイン電流の変化が著しく小さいことを確認した。反面、浮遊ゲートをもたない通常のトランジスタに比べて低電圧(~20 V)で強く発光することを確認した。また、ソース-ドレイン間の電位差を大きくするにつれて、チャネル部全体からの発光を明らかにした。 上記の実験を通して浮遊ゲートトランジスタのプロトタイプを確立し、本研究の実用的意義および独創性に訴求することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機半導体薄膜と金属酸化物半導体薄膜とからなる浮遊ゲート発光トランジスタのプロトタイプを構築することができた。特に、低電圧駆動による高輝度発光を実現することができたのは、大きな収穫である。ただし、ゲート電圧の変調によるドレイン電流および発光輝度の変化が通常の発光トランジスタデバイスと比較して著しく小さいことは、当初予想しなかった。この原因として、金属酸化物半導体中の豊富なキャリア(電子)の存在をあげることができる。このことは、同時にデバイスの高輝度発光を可能にするので、デバイスの動作特性をさらに詳細に解析して浮遊ゲート発光トランジスタの特徴を明らかにしたい。 上記の結果をまとめて論文投稿(Adv. Mater. 誌)し、受理されて近日中に出版予定である。
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今後の研究の推進方策 |
デバイスの発光形態を解析することが浮遊ゲート発光トランジスタの動作特性を把握する上で重要であるので、駆動条件の違いによってデバイス上での発光場所、発光強度がどのように変化するかを、克明に調べる。このために、デバイス駆動法として既に開発した「交流ゲート電圧駆動法」をも援用する。これらのアプローチによってデバイスを克明にキャラクタライズし、高輝度発光トランジスタの開発につなげる。 前年度の薄膜デバイスを発展させ、有機半導体結晶デバイスの作製に注力する。前年度に選定した有機半導体材料を用いて結晶を作製し、これを組み込んだデバイスの最適駆動条件を探ると共に、デバイスの光電子特性を詳細に測定する。さらに、有機半導体結晶薄膜と金属酸化物半導体との間に良好なヘテロpn接合を形成し、接合が有機半導体結晶と金属酸化物半導体からなる複合膜の移動度、極性(p型、n型、アンビポーラー)や発光特性にどのように影響するか、データを蓄積する。 別途、両者からなるサンドイッチ型ダイオードを作製し、整流比など接合の電気特性を測定して界面整合を評価する。これらの諸目的を遂行するために、連携研究者と共に開発した独自の高品質有機結晶薄膜作製法(気相、液相プロセスとも)を駆使し、(i) 貼り合せによる積層、(ii) 金属酸化物半導体上へのTPCO 結晶薄膜の直接成長による積層等によって、金属酸化物半導体との界面整合に優れた複合積層膜を作製するプロセスを探索する。 これらの実験を通して有機/無機ヘテロpn接合作製技術を確立すると共に、浮遊ゲート発光トランジスタの高性能化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に電気部品、光学部品等の消耗品購入に充てる。また、高性能有機半導体の材料合成等を視野に入れて、浮遊ゲート発光トランジスタに実用デバイスとしての高付加価値を与える。有機半導体材料として、高い電荷輸送特性と発光特性とを兼ね備えた(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)の材料開発に重点を置く。
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