研究概要 |
有機熱電デバイスは、フレキシブル化による大面積や低コスト、さらには、材料としての高い安全性が期待される。しかしながらその熱電性能は、未だ不十分であり、これまで本研究では、高移動度が期待される有機FET用に開発された低分子蒸着薄膜について検討を進めてきた。低分子薄膜では、成膜条件のコントロールによって、1cm2/Vsに達する高い移動度を利用することで、数十μW/mK2に達するpower factor(PF)を得ることができた。しかしながら、真空蒸着法による成膜は、SAM剤等による下地層の制御や成膜条件の精密な制御が必要であり、フレキシブル大面積化の観点からは多くの課題があり、高分子材料のスピンコートやキャスト法などによる簡便な熱電素子化が期待されている。本研究では、poly(3-hexylthiophene)薄膜をホストに、アクセプターである 2,3,5,6-tetrafluoro-7,7,8,8-tetracyanoquinodimethaneをドーピングを行い、さらにAging処理条件の制御によって、低分子薄膜に匹敵する熱電性能(PF~30μW/mK2)を得ることに成功した。ドープ膜のXRD解析の結果、ドーピング後においても薄膜の高い結晶性が保持されており、このことが高い熱電性能の発現に繋がっていることが分かった。今後は、デバイスの高性能化を目指して、導電性高分子材料の広範な材料探索と成膜プロセスの最適化に取り組み、高性能な有機熱電デバイスの創製を目指す。
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