昨年度の検討の結果,光電変換効率の低い有機薄膜太陽電池セルに金ナノドットアレーを導入することで,変換効率が向上する傾向があることが観察された.本年度は,光電変換効率のさらなる改善を目指し,昨年度に引き続き,ナノドットアレーの形成手法に関して検討を加えた. これまでに,金ナノドットに加えて,アスペクト比が2程度の金ナノロッドの形成が観察されている.本年度は,近赤外光の効率的な利用にもとづいた有機薄膜太陽電池の高効率化へ適用可能な,近赤外光の効果的な捕集が可能な光アンテナの形成を目的として,高アスペクト比を有する金ナノロッドの形成に関して基礎的な検討を行った.金ナノロッドアレーの形成には,昨年度までの検討と同様,陽極酸化ポーラスアルミナを蒸着マスクとして用いた.陽極酸化ポーラスアルミナを配置した基板に対して金を斜めから蒸着し,ポーラスアルミナのナノ細孔の位置に対応した基板の一部へ金を堆積させることで,高アスペクト比を有する金ナノロッドを形成した.検討の結果,アスペクト比が5程度の金ナノロッドの形成が可能となった.そして,本ナノロッドアレーは,波長1.5~2.5μmに対応した光アンテナとして機能する事が確認された.さらに,効率的な光捕集系の構築を目的として,金ナノロッドの3次元配列形成に関して検討を行った.検討の結果,金と誘電体(Al2O3)が交互に積層された,金ナノロッドの3次元配列の形成が観察された.
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