本研究の目的は、ドナー性とアクセプター不純物を同時にドープする、クロスドーピングを、有機薄膜太陽電池の共蒸着層に適用し、実質的にi(intrinsic)層として機能させ、アモルファスシリコン類似のpin接合を有機半導体において、完全コントロール下で作り上げ、高効率を得ることである。 研究代表者は、MoO3(アクセプター)、Ca(ドナー)ドーピングによってC60をp型化、n型化するpn制御に成功している。Caは非常に酸化しやすいため取り扱いが難しいため、Caに代わるドナー性ドーパントの探索を行い、Cs2CO3が大気中に出しても酸化しない安定なドナー性ドーパントであることを見いだした。 その結果、Ca2CO3とMoO3を用いて、C60単独膜にpnホモ接合を形成することに成功した。また、3元蒸着法を用いる、i層へのクロスドーピングによるpin接合の形成にも成功した。i層のエネルギー構造をドナーとアクセプターの比率で精密に制御することにも成功した。 さらに、有機太陽電池として動作する3元蒸着によるC60: sexithiophene共蒸着膜への直接ドーピング技術も開発し、上記pin接合を作製することに成功し、pin接合シングルセルにおいて効率1.6%を得た。さらに、2つのpin接合を連結したタンデムセルにおいて効率2.4%を得た。以上のように、本方法の有効性を確認することができた。
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