本研究では、低分子ゲル化剤のバイオマテリアルへの応用の一つとして、細胞培養基材としての有用性について検討した。当研究室で合成された多くのL-アミノ酸型低分子ハイドロゲル化剤について、アミノ酸の種類、電荷および濃度などの条件を変えて、マウス線維芽細胞の細胞培養の基礎研究を行った。L-アミノ酸型の低分子ゲル化剤として、L-リシン、L-バリン、L-イソロイシン、L-アラニン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-スレオニン、L-ヒスチジン誘導体を利用した。ここで、末端に負電荷を有するL-アミノ酸誘導体と末端に両性イオンを有するL-アミノ酸誘導体、特に末端に負電荷あるような両性イオンの2種類の低分子ゲル化剤を合成した。まず、水溶液、特にリン酸緩衝生理食塩水や生理食塩水へのゲル化テストを行ったところ、ほとんどのゲル化剤が、ハイドロゲル化剤として機能できることがわかった。さらに、マウス線維芽細胞を使って細胞培養基材としての性能を調査したところ、負電荷をもつL-リシン型ハイドロゲル化剤が細胞培養に有効であることがわかった。種々の条件を変えて検討し、L-リシンハイドロゲル化剤に関して、繊維芽細胞培養に関する最適化ができた。さらに、骨芽細胞について同様な検討を行ったところ、ゲルへの細胞の接着が弱く、培養基材としては有効ではないことがわかった。
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