磁気を有する微粒子上に炭素皮膜を調製し,さらにその上にシリカ被膜をつけた多層コアシェル粒子を熱処理して磁気粒子をコア,シリカをシェルとする中空コアシェル粒子を作製し,これをもとにして粒子集合体を調製することを目的とした.これを実現するために,まず,磁気粒子にかえて酸化チタン(IV)(チタニア)をコアとする中空コアシェル粒子の調製法の最適化を行った.さまざまな市販チタニア粒子を原料として用いたところ,粒子径が数10ナノメートル程度の場合には,中空コアシェル構造をつくることがむずかしかった.いっぽう,粒子径が100ナノメートル以上ではほぼすべての粒子が中空コアシェル構造をもったものを調製できたが,やはり1個の粒子だけをコアとして含むものを調製することができなかった.つぎに磁気粒子であるマグネタイト型酸化鉄微粒子をもちいて中空コアシェル粒子の調製を試みたが,やはり1個の粒子だけが含まれるものは調製することができなかった.そこで,磁気を帯びていないヘマタイト型酸化鉄を原料として中空コアシェル粒子を調製し,そのあとで内部の酸化鉄を磁気化する戦略をたてた.まずヘマタイト型酸化鉄粒子について,光触媒還元法により磁気化することを試みた.メタノールなどの電子供与体存在下,無酸素で光照射することにより,ヘマタイト型酸化鉄粒子中に生じる正孔を電子供与体と反応させ,励起電子により酸化鉄じしんを還元して磁気化させることを試みた.結果として,磁気化することに成功したこの結果にもとづいて,ヘマタイト型酸化チタンをコアとする中空コアシェル構造粒子の磁気化を行うため,この中空粒子の調製をこころみた.ヘマタイト型酸化鉄粒子を分散させることが非常に困難で,内部に1個のヘマタイト型酸化鉄粒子を含む中空コアシェル構造粒子は得られなかった.
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