研究概要 |
【目的】本研究は、長波長光を短波長光に変換するアップコンバージョン蛍光体の実用化のため、固体内の希土類ドーパント(ドナー/アクセプター)の分散を最適に制御するという、全く新しい発想に基づいて前駆体の分子デザインを行い、発光輝度を飛躍的に向上させることを目的としている。 【23年度の研究計画】本年度本年度は、これまでの希土類6核クラスターの熱分解により生成したY2O3:Er,Yb蛍光体において、ドナー(Yb)/アクセプター(Er)のドメインを形成するという仮説を実験的に検証する。一方、6核クラスター調製の再現性に不十分な点があるため、調製法の再検討するとともに、Er,Ybの最適なドープ濃度を調べるため、発光強度と発光量子効率のマッピングを行った。 【結果】現在、あいちシンクロトロン光センターでのXAFS測定による検証に向け試料の準備を進めている。また、6核クラスター合成時の副生成物がYb2(OH)5NO3・2H2Oであることが判明し、反応収率の向上に向け調製法を再検討している。Er,Yb濃度の最適化の結果、緑色発光効率はEr:1.25%,Yb:2.5%を中心とする極めて限定された濃度で最大を示したのに対し、赤色発光効率はEr:0.5~8%,Yb:1~8%の広範囲で比較的大きかった。このことは両発光が異なる励起過程で発光していることを示唆する。また、量子効率の最大値は緑色発光で約1.3%、赤色発光で約4.5%と見積もられた。
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