研究実績の概要 |
【目的】長波長光を短波長光に変換するアップコンバージョン蛍光体の発光効率を飛躍的に向上させるため、固体内の希土類ドーパント(ドナー・アクセプタ)の分散状態を制御してエネルギー移動を最適化する新しい試みを行った。これを実現するため希土類クラスター分子を前駆体として用いる手法を提案した。本手法で生成した蛍光体と、ドーパント分散を制御しないこれまでの手法による試料を比較した。 【26年度の実績】本年度はまず、蛍光体の前駆体となる希土類六核クラスター(Ln6)の収量と再現性を向上させるため、中間生成物と不純物の同定を行い合成過程を推定した。その結果をもとに合成時の組成最適化を行った。 一方、高速な光センサー応用に適したY2O3:Er,Yb蛍光体を探索するため、励起源としてパルス幅数十~百ナノ秒オーダーの1550nm高出力(52W)パルスレーザを導入し、25年度に本手法で調製したY2O3:Er,Yb蛍光体と、従来法による比較試料について、発光スペクトルと発光応答性の評価を行った。その結果、応答性はEr、Yb濃度に強く依存することが示された。さらに、種々の波長の連続光を試料に照射し予備励起することにより、応答性と感度が数ケタ向上することを見出した。 以上の結果から、前年度までに得られた長パルス光(またはCW光)励起下で最大の発光量子収率を示すドーパント濃度と、今年度検討した短パルス光励起下で高い応答性と発光強度を示すドーパント濃度とは、必ずしも一致しないことが判明し、応用目的に応じて組成を選択する必要があることが示された。
|