研究課題/領域番号 |
24655190
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大石 修治 信州大学, 工学部, 教授 (50021027)
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研究分担者 |
手嶋 勝弥 信州大学, 工学部, 教授 (00402131)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フラックス法 / ナノ結晶 / CNT / マルチブランチ構造 / 電界放出素子 / 燃料電池 / 触媒担体 |
研究概要 |
白金や希少金属などの元素戦略は,現在不可避な研究課題のひとつである。本研究では,きわめてユニークで,高度に複合化した機能性ナノ結晶/ナノカーボンからなるグリーンナノ結晶複合体を作製し,次世代グリーンマテリアル応用をめざす。特に,グリーンナノ複合体の製法として,自然界での結晶成長をモデルにした環境調和型フラックスプロセスを採用する。この方法では,通常の方法では複合化できない高品質なナノ結晶をさまざまなナノカーボン表面に直接ビルドアップできることを特長とする。具体的には,①フラックスプロセスにより,非・省白金触媒を低温・常圧下でナノカーボン表面(あるいはナノカーボンマテリアルを被白金触媒表面)に高次複合化し,さらに,②各種エネルギーデバイスに適するナノマテリアルデザインを実践する。 具体的には,フラックス育成した高アスペクト比をもつ一次元金属酸化物ナノウィスカー表面を部分的に還元することで金属サイトを作製した後,その表面でCNTを直接成長させ,空間デザインしたユニークな複合体(グリーンナノ結晶複合体)の創成をめざした。特に初年度は,一次元酸化コバルト(1D-CoO)ナノウィスカーをターゲットに選択した。この1D-CoOナノウィスカーを還元雰囲気で焼成し,その表面を部分的に還元し,金属Co表面を導入した。その後,この部分還元1D-CoOナノウィスカーをテンプレートに用い,化学気相蒸着(CVD)法によりカーボンナノチューブ(CNT)を成長させたところ,マルチブランチ型1D-CoO/CNT複合体の作製に成功した。この方法では,従来法と比較し,CNT成長用の触媒金属パターンを必要としないことを特長とする。また,本研究で作製したマルチブランチ型1D-CoO/CNT複合体は,CNT電界放出素子の高効率化に寄与するとともに,燃料電池や触媒担体としての応用も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ユニークなグリーンナノ複合体を低環境負荷プロセスにて作製する技術を提案する。特に,マテリアルデザインにフラックス概念を導入することで,超高品質なナノ結晶をカーボン表面(あるいはナノカーボンマテリアルをナノ結晶表面)に形成できる。また,ナノマテリアル(結晶やカーボン)成長を自在にデザインすることで,レアメタル代替(省資源)材料となる高度グリーンナノ複合体を創成できる。 初年度は,金属酸化物系(or省白金)ナノ結晶をナノカーボン表面(あるいはナノカーボンマテリアルをナノ結晶表面)に直接形成する技術の確立を目標とした。具体的には,①複合体の作製,②成長過程の観察と成長制御,③複合体の高機能化・新機能獲得(特性評価)に注力した。下述のとおり,課題全体(①~③)では,おおむね順調に進展していると判断する。 ①については,部分還元1D-CoOナノウィスカーをテンプレートとし,CNTを直接成長させることで,マルチブランチ型複合体を作製できた。そのため,課題①については順調に進展していると判断する。 ②については,還元サイトを適宜導入することで,マルチブランチ構造を形成でき,その成長過程を一部観察できた。ただし,還元サイトを自在にデザインするには至っていないため,おおむね順調に進展していると判断する。 ③については,複合体の電界放出特性を評価する方法を模索している最中である。ただし,1D-CoOナノウィスカーをLiCoO2ウィスカーに変換した後,そのリチウムイオン二次電池正極材料特性評価を実施し,理論値同様の特性を得られることを見出した。これらの結果を総合し,やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初課題は,3つの研究項目に大別できる。具体的には,①グリーンナノ結晶複合体の作製,②その成長過程の観察と成長配向制御(成長モデルの確立)および③グリーンマテリアルとしての産業応用の可能性検討(高機能化・新機能獲得)を目的とした。 課題①については,マルチブランチ型1D-CoO/CNT複合体を作製できたため,次年度は還元サイトのデザイン,CNT成長制御,他の1Dマテリアルの応用,CNT表面での金属酸化物ナノ結晶の成長を試みる。ただし,現在の複合体にユニークな特性を見出せた場合,他の1Dマテリアル応用や金属酸化物ナノ結晶成長をペンディングし,性能評価・向上に主眼を置く。 課題②については,還元サイト導入やCNT直接成長を実現できることを見い出したにとどまっている。そこで次年度は,その導入過程や成長過程の詳細な観察に注力し,成長モデル解明の端緒を見い出すことに努める。 課題③については,マルチブランチ型複合体の性能評価に至っておらず,新しい複合体の評価方法の確立に注力する。最終的に,脱レアメタルに向けた複合体作製の情報を集め,ナノマテリアルデザインマップの構想を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額については,年度末に予定していた学会に急きょ参加できなくなったため発生した。 また,次年度の研究費の使用については,前年度提出済の交付申請書から変更はない。試薬をはじめとする消耗品が研究費の半分を占め,残り半分を成果発表・情報収集に係る旅費と実験補助者の謝金などに使用する。
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