研究課題/領域番号 |
24655191
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高井 千加 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (30599056)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / シリカ / 薄膜 / 光散乱 |
研究概要 |
スケルトン粒子の光学特性発現に関わる構造因子を解明するために、異なる構造を有するスケルトン粒子の合成技術を確立することを目的とし、以下の研究を行った。表面をデヒドロアビエチン酸(DAA)で被覆した炭酸カルシウム(CaCO3)をテンプレートとし、テトラエトキシシラン(TEOS)のゾルゲル反応をDAAの貧溶媒であるエタノール中で行うとスケルトン粒子ができることがわかった。さらに、反応溶媒の極性を(a)EtOH~(b)EtOH/Dg混合溶媒~(c)Dgと変化させると、極性の高いEtOHから極性が低いDgになるにつれて、スケルトン構造の開口径が徐々に小さくなり、中空構造へ近づくことがわかった。中実、中空、スケルトン構造は、上述した通り作り分けが可能である。粒子径は、コアであるCaCO3の粒子径を制御することにより、スケルトン粒子の大きさを制御可能である。スケルトン構造が形成可能な粒子径としておよそ50nmであることがわかった。 これらの粒子をUV硬化性樹脂溶液に分散させ、ガラス基板上にコーティング薄膜を作製した。分散状態は超音波照射時間によって変化させ、薄膜の透過性、拡散特性を紫外可視分光光度計により評価した。粒子濃度0~20wt%に変化させた薄膜を作製し光学特性を比較し、透過性、拡散特性を具備する粒子濃度の最適化を行っている。また、上述した微構造の異なる粒子を樹脂と複合化させた薄膜を作製し、同様に光学特性評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究計画として、「1.粒子構造、微細構造を制御したスケルトン粒子の合成技術の確立」を挙げ、炭酸カルシウムコア粒子表面に被覆したアビエチン酸(DAA)と、ゾルゲル反応の反応溶媒として用いる溶媒の溶解性、極性を考慮することによりスケルトン構造を形成させる技術を確立した。スケルトン粒子の微構造として、粒子径、シリカフレーム厚、フレーム微細構造の制御を挙げた。粒子径は30~150nmのDAA被覆したコア粒子を用いたが、50nmより小さい粒子、100nmより大きい粒子ではスケルトン構造を形成させることができない。シリカフレーム厚はシリカ種であるアルコキシドと炭酸カルシウムコアの混合割合により制御可能であるが、厚くなるにつれフレーム幅が太くなりスケルトン粒子の特長である四辺形状の孔が塞がれることを実験により確認した。 スケルトン粒子の構造制御がある程度確立したため、平成25年度に計画していた光学特性評価に入った。光学特性に影響する因子として粒子の微構造以外に粒子の分散性が挙げられる。紫外線硬化樹脂を選択し、樹脂塗料中の粒子の分散性を超音波照射時間により変化させ粒度分布にて評価した。これを基板上に塗布し樹脂硬化後複合薄膜とした。薄膜中の粒子の分散性はレーザー顕微鏡により評価し、紫外可視分光光度計により複合薄膜の光学特性を調べ、粒子構造、分散凝集構造との関連性を調査している。
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今後の研究の推進方策 |
①複合薄膜の透過性、拡散性を同時に発現しうる最適粒子濃度を決定する。同様に、粒子径、フレーム構造の違いと光学特性について把握する。 ②スケルトン粒子-樹脂複合薄膜の光学特性を評価する上で、粒子内部の空間やシリカフレーム微構造内に入り込んだ樹脂塗料や溶剤が薄膜の光学特性を低下させているおそれがあることが考えられた。そのため、粒子単体の屈折率、樹脂塗料と混合後の屈折率の測定、有機物と化学的に結合可能な金属錯体を用いて薄膜の電子顕微鏡観察を行い、粒子内部に侵入した有機物の存在を明らかにすることを試みる。そのうえで、これらの有機物が薄膜の光学特性に与える影響について調査する。 ③上記の結果をもとに、スケルトン粒子が複合薄膜の光学特性を発現する機構について考察し、光学理論の基盤を作る。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費 備品1,500,000 旅費 500,000 人件費500,000 その他111,284 合計2,611,284
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