研究課題/領域番号 |
24655199
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
緒明 佑哉 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (90548405)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 量子ドット / 層状化合物 / ナノシート / はく離 |
研究概要 |
本研究は、無機化合物モノレイヤーのナノドットを温和な条件下で溶液合成する手法を確立し、その基礎的な物性の理解および新しい機能性の開拓を目指す。層状無機化合物を原子層レベルの厚みへ単層はく離したモノレイヤー構造において、さらにその横幅のサイズを5ナノメートル以下程度に制御した究極に薄く・小さい無機ナノ材料が、目的とするモノレイヤーナノドットである。平成24年度の具体的な成果として、酸化チタン、酸化タングステン、酸化マンガンにおいて、実際にモノレイヤーナノドットの作製に成功し、これらの光吸収特性の調査を終えた。いずれも、横幅が10ナノメートル以下程度で、厚さが原子層レベルの構造を合成ることが可能であった。得られた酸化チタン・酸化タングステンのモノレイヤーナノドットは、横幅と厚み方向の制御による強い量子サイズ効果を示すことが観測された。一方で、酸化マンガンのモノレイヤーナノドットは、半導体ではないため、光吸収挙動の変化は現れなかった。酸化チタンおよび酸化タングステンにおいて観測された量子サイズ効果によるバンドギャップのブルーシフトは、理論計算の値ともよく一致し、モノレイヤーナノドットの生成とその特性値の信頼性を支持するものであった。また、平成24年度の成果を別な側面から見ると、原子間力顕微鏡法、透過型電子顕微鏡法、紫外可視吸収スペクトルなどによって、このような薄くて小さい材料を評価する方法論もおおむね確立することができたともいえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画で2年弱を予定していた、モノレイヤーナノドットを合成・評価する計画が順調に進行し、平成24年度にほぼ完了した。さらに、この成果は米国化学会の権威ある査読付き論文誌、Journal of the American Chemical SocietyのArticleとして掲載された。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに多様な物質におけるモノレイヤーナノドットの合成を目指す。もともとの層状物質は、2次元平面方向へ成長しやすいため、ナノ結晶の作製が難しかった。平成24年度の成果により、層状構造を持つ無機結晶の形態制御の可能性を見出すことができている。これにより、他の様々な化合物においてモノレイヤーナノドットの合成を目指す。さらに、有機分子との集積構造作製の準備段階として、有機溶媒へ分散可能なはく離技術の構築を検討する。いくつかの層状物質について、有機分子を導入した上で有機媒質へはく離・分散させることを目指す。有機媒質中に単層はく離することができれば、疎水性相互作用によって機能性有機分子との集積構造を構築することが可能になると考えられる。これにより、無機分子としてのモノレイヤーナノドットと有機分子の分子レベルの複合体の作製を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
高額な設備・備品の購入予定はなく、合成用の実験器具(消耗品)の購入、電子顕微鏡などの分析機器の使用料、成果発表のための交通費等に使用する予定である。
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