これまでの研究において、12CaO・7Al2O3(C12A7)結晶のCaサイトのMgよる完全置換、12MgO・7Al2O3(M12A7)結晶の高圧合成が上手く行かなかったため、1つ段階を踏み、構成カチオンの大きさに対する合成条件(圧力・温度)の変化を検証する目的で、C12A7結晶と12SrO・7Al2O3(S12A7)結晶の固溶体合成を試みた結果その合成に成功し、Srの固溶量に応じ、温度だけでなく圧力も調整し最適な合成条件を求める必要があることがわかった。 昨年のM12A7結晶の合成では、圧力一定の条件(10 GPa)でのみしか試みていなかったため、まず、合成圧力も2.5 GPa~10GPaまで変化させながら、M12A7結晶の合成を試みたが当該物質の合成には至らなかった。そこで次に、C12A7結晶の合成条件を基点とし、Mg固溶(CaサイトへのMg部分置換)の可能性を検討した。また、以前行った圧力の精密制御に加え、発生温度の再現性向上も試み、発生温度の誤差要因として、ヒーター抵抗のばらつきよりも、圧力誤差の影響が大きいことを見出した。つまり、これまでの圧力制御精度の改善は温度制御の面でも有用であることを明らかにした。以上、高圧合成技術の改善を行ったうえで、試料合成を、0.4~5.0 GPa、900~1600℃の圧力・温度領域で行った。C12A7結晶合成において、合成時の試料中OH濃度が、当該物質の生成に大きく影響したため、OH濃度も高圧合成のパラメータとした。結果は、合成圧力・温度を高くした場合、MgAl2O4、Ca4Al6O13(高圧相)のいずれか、若しくは両方がMg濃度に依存して優位に生成した。合成時のOH濃度の影響に関しては、OH濃度が高いと、水酸化物、Ca3Al2(OH)12とMgAl2O4が主な生成相になり、今回の合成条件では、Mgの固溶は認められなかった。
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