研究課題/領域番号 |
24655201
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
兵頭 俊夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別教授 (90012484)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 陽電子 / ポジトロニウム / 空孔サイズ |
研究概要 |
Na-22 線源からの陽電子を真空中に置かれた多孔質物質に照射できるよう、カプトン (ポリイミド) 薄膜で挟んだ1μCi と 5μCi の2種類の Na-22 陽電子線源を作成した。カプトン薄膜中で消滅する陽電子の寿命は、本実験で測定するオルソポジトロニウムよりも 1/100 から 1/1000 程度短いため、解析に影響はない。次に、測定チャンバー及びそのための架台を組み上げ、真空排気装置の立ち上げを行なって、測定に十分な真空度が得られるようにした。測定チャンバーの真空シールは試料交換を頻繁に行なうため、Oリング方式のものを用い、試料ホルダーには、陽電子線源を 2 つの試料に挟んだ状態で最大 5mmx10mmx10mm の大きさの試料が収まるものを用意した。また、陽電子寿命測定回路を構築した。Na-22 から陽電子が放出されると同時に放出される 1.27 MeV の核γ線を、BaF2 シンチレーション検出器でとらえ、その発光を光電子増 倍管で電圧変換・増幅し、Constant Fraction Discriminator (CFD) で時間情報に変換して陽電子生成時刻とする。陽電子が電子と対消滅して放出される 0 ~ 511 keV のγ線を、もう一方の BaF2 のシンチレーション検出器で同様にとらえ、光電子増倍管と CFD により陽電子の消滅時刻とする。両方の CFD の出力を、Time to Amplitude Converter (TAC) に入力し、それらの時間差を電圧に変換して、Multi Channel Analyzer (MCA) に入力して陽電子寿命スペクトルが得られるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、1) Na-22 陽電子線源、2) 測定チャンバーの組み上げ、3) 陽電子寿命測定回路の構築、4) 種々の silica gel、zeolite、zirconia 等の試料で、ガス吸着法、水銀圧入法、パームポロメトリーなど他の測定方法により細孔のサイズを評価する、ということを予定していた。1)、2)、3) については計画を達成できたが、4) については、達成できていない。当研究メンバーの所属する組織にこれらの測定装置はないが、測定を依頼できる外部の機関についての情報を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
平成 24 年度に構築した装置にを用いて測定を行なう。得られた陽電子寿命スペクトルからポジトロニウムのピックオフ消滅率を抽出し、新しく開発した方法によって多孔質物質の空孔の平均自由行程を求める。種々の silica gel、zeolite、zirconia 等の試料について、本手法で測定及び評価を行なう。この手法との比較のため、種々の silica gel、zeolite、zirconia 等の試料で、ガス吸着法、水銀圧入法、パームポロメトリーなど他の測定方法により細孔のサイズを評価し、結果を比較・検討する。さらに、細孔の半径が 1 nm 前後の試料に対し、Tao-Eldrup モデルで評価した結果と、1 nm 以上での適用を提案する本実験計画課題の細孔評価モデルの結果とを比較し、両者の接続する領域での細孔のサイズ評価方法の理論的裏付けを検討する。さらに、他の手法では細孔の大きさを測定できない silica aerogel などの試料について、本手法で測定を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、本課題の陽電子寿命測定回路で使用している光電子増倍管用高圧電源は、他の研究プロジェクトから一時的に借用したもので、間もなく返却する必要があるため、物品費は高圧電源の購入にあてる。本研究で開発する手法による測定結果が得られたら、国際会議で発表を行いたいので、旅費はそのために使用する。その他については、試料の購入と、本手法との比較のために行なう、ガス吸着法、水銀圧入法、パームポロメトリーなど他の測定を外部機関に依頼するために用いる。
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