研究概要 |
産業上重要な機能性多孔質体の孔は、外部に開放されている場合と内部の孤立孔になっている場合がある。陽電子(電子の反粒子)消滅による細孔サイズ評価法は、そのどちらにも適用できる。この手法による評価ではTao-Eldrupモデルがよく使われているが、これは1nm付近に適用限界があり, それ以上のサイズへの適用はできない。そのため、それ以上のサイズに適用できる定式化に向けて様々な試みがなされているが、決定的な方法はまだ存在しない。 本研究では、ポジトロニウムと気体分子の相互作用のデータに基づく理論的基礎付けを行ない、非常に簡単なモデルで細孔サイズ評価への適用範囲の上限を3桁広げ、1μm程度まで評価できるようにした。この新しいモデルは古典的描像に基づくポジトロニウムのピックオフ消滅率の空孔サイズ依存性を定式化したものであるが、量子力学と統計力学に基づいたGidleyらのモデルの結果と驚くほどよく一致した。このことから、Gidleyらのモデルと我々の新しいモデルが、Tao-Eldrupモデルとスムーズにつながり、1nm以上のサイズまで適用できるモデルであると考える。しかも、Gidleyらのモデルが直方体の形をした孔にしか適用できないのに対して、我々のモデルは孔の形状や孤立孔であるか外部に開放されているかに依存せず、またGidleyらのモデルに比べて関数の形がきわめて単純なので、有用性が高い。 このモデルを、外部に通じた孔を持つ典型的な物質であるシリカエアロゲルに適用したところ、従来の手法と違って、ミクロな空隙サイズの評価値と比重に矛盾のない結果が得られた。
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