研究課題/領域番号 |
24655204
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
河原 成元 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (00242248)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ材料 |
研究概要 |
ナノメートルサイズの細孔(ナノ細孔)と高分子の絡み合いを組み合わせることにより、化学結合と同程度の力を支えることが可能な“絡み合い結合”を創成することを目的とし、ゴム状高分子が複数のナノ細孔を往復することによって絡み合い結合を形成することを検討した。 ナノ細孔は、サイズが均一なポリマーナノ粒子を細密充填することにより形成することを試みた。室温でゴム状高分子の粒子の表面にモノマーをグラフト共重合し、ポリマーナノ粒子を細密充填することにより、ナノ細孔を有するナノシートを作製することを試みた。この隙間は縦横無尽に形成されているため、シートが厚くなっても、縦の細孔に入り込んだゴム状高分子の末端は横の細孔を伝って別の縦の細孔に入り込み、ランダムコイルに戻ることができると考えられる。すなわち、シートの厚さに関係なく、ゴム状高分子がナノメートルサイズの細孔の表面から裏面に通り抜け、再び裏面から表面に細孔を通り抜けることを繰り返すことが可能であると考えられる。この仮説を裏付けるため、FIBで表面から深さ方向に断面を削ってから走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いることにより、ナノシートへのポリマーナノ粒子の充填とナノ細孔のFIB-SEM観察を行った。また、透過型電子線トモグラフィー(TEMT)法により、ナノシートの3次元観察を行った。その結果、厚さ約10および80nmのナノシートにそれぞれ直径約5および約60nmのポリマーナノ粒子を数nmの間隔で密に充填されていることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたナノシートにナノ細孔を形成することに成功し、ナノシートに形成されたナノ細孔をFIB-SEMおよびTEMT法により観察できたためおおむね順調に研究は進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
集束イオンビーム・フィールドエミッション走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)および透過型電子線トモグラフィー法(TEMT)を用いる絡み合い結合の3次元観察技術を確立する。また、引張試験や動的粘弾性測定により絡み合い結合を評価し、モルフォロジーと関係づけて考察することにより、絡み合い結合に関する化学の新領域を創成するための基礎を築く。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に決定した条件で、ナノメートルサイズの細孔を数ナノメートルの間隔で作製するため、溶媒、開始剤、試薬、ガラス器具および分析機器消耗品費は前年度より少なく購入する。TEMTおよびFIB-SEMを用いて三次元構造観察を積極的に行なうため、グリッドや試料包埋用の樹脂は多めに購入する。NMR測定、FT-IR測定、分子量測定および動的粘弾性測定は頻繁に行うため、前年度より予算を多めに確保している。研究成果は、河原および博士後期課程学生1名が学会発表および学術雑誌投稿することにより積極的に報告する。大学院学生(修士課程1名、博士課程1名)には自分自身の研究および勉学の妨げにならない程度に研究補助をしてもらう。
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