任意の性質/構造を有する水で膨潤した非等方化ゲル微粒子が得られていることを確かめるために、正電荷・負電荷を有する同じサイズのゲル微粒子の合成を試みた。光学顕微鏡下での有意な観察が可能な、ミクロンサイズの単分散ゲル微粒子を得た。これらを水中で混合し、気液界面における集積挙動を追跡したところ、それらの挙動は、液中の塩濃度・温度に依存し変化した。特に、塩濃度の低い場合には、正電荷・負電荷のゲル微粒子が凝集し、まずダイマーを形成した。この凝集体は、時間と共に鎖状に成長していくことが観察された。このことは前年度に観察された非等方性ゲル微粒子の挙動と一致した。これらの鎖状凝集体の構造は、正電荷と負電荷のゲル微粒子数比・サイズ比に大きく影響した。特に、酸化的開裂反応を示す架橋剤によって合成された負電荷を有するゲル微粒子を用いた際、電子顕微鏡観察によって、正電荷と負電荷のゲル微粒子が交互に連結していることが明らかとなった。以上の知見を活かし、前年度より試みている非等方性ゲル微粒子の評価を行った。異種ゲル微粒子混合系とは異なり、作製した非等方ゲル微粒子は長く有意な鎖状構造を形成するに至らなかった。混合系の結果から推測すると、おそらく作製した非等方ゲル微粒子の電荷量や均質性が不十分であったことが考えられる。この他に、固体基板上にゲル微粒子を吸着し、スパッタリング法によって作製した非等方ゲル微粒子は、分散安定性の低下が著しく、凝集実験に用いる事が出来なかった。従って、エマルション法を活用した手法が非等方化のために優れていることに間違いはないが、修飾面を制御し、凝集状態を制御するには至らなかった。この点は、界面におけるゲル微粒子の挙動に不明確な点が多く残ることが課題である。今後、以上の課題を克服し、水/油界面において正確な修飾面を示す非等方ゲル微粒子を実現することが重要である。
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