研究概要 |
シンジオタクチックポリスチレン(SPS)はエンジニアリングプラスチックに分類され、軽量であり、耐熱性、耐薬品性、耐酸・耐アルカリ性、流動性、結晶性に優れるといった様々な利点を持っている。今年度はテンプレートを使用しない相分離法を用いてメソポーラスSPS(SPSモノリス)の作製を検討した。SPSをN-メチルピロリドン(NMP)とデカリンの混合溶媒に150℃で加熱溶解させた。その後プロピレンカーボネートを添加し、20℃に冷却したところ、相分離が誘起され、容器形状に沿った成形体が析出した。内部の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察し、細孔径分布及び比表面積は窒素吸着法により求めた。ポリマー濃度120 mg/mL、混合溶媒比率NMP : デカリン:プロピレンカーボネート= 5 : 10 : 4 (vol) の条件で得られた成形体のBET比表面積は240 m2/gであり、約8 nmにピークをもつ細孔径分布を示した。これらの結果から、SPS成形体が大きい比表面積を有するメソポーラス材料であることがわかった。次にポリマー濃度の影響を調べた。ポリマー濃度80, 120, 200 mg/mLで得られる成形体のBET比表面積は各々150, 240, 190 m2/gであった。また、ポリマー濃度は成形体内部のモルフォロジーにも影響した。濃度が上昇するにつれて骨格の厚みが増大し、これは成形体の同体積中を占めるポリマー量の増加によるためと考えられた。また、ポリマー濃度が高くなるにつれて10~30 nm付近の細孔の割合が増大した。
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