研究課題/領域番号 |
24656004
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大山 研司 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60241569)
|
研究分担者 |
林 好一 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20283632)
奥 隆之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究主幹 (10301748)
前川 藤夫 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 経営企画部, 研究主幹 (30354723)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 中性子 / 多波長ホログラフィー / 局所構造 / パルス中性子 / ドーパント / CaF2 |
研究概要 |
原子分解能中性子ホログラフィーは、中性子実験としては唯一の核種選択的な局所構造解析技術であり、かつスピンや水素研究にとって決定的な役割を果たす。本研究では大強度陽子加速器施設(J-PARC)を利用して、多波長での精密中性子ホログラフィーを世界で初めて実現する。成功すれば水素原子像再生の飛躍的高度化が可能になる。さらに0.01Aで原子位置を決定する解析コードの開発、白色偏極中性子を用いた高精度磁気イメージングにも取り組む。X線では例えば0.8-1.0A 範囲で10 本程のホログラムを測定するが、本計画ではさらに広い波長範囲(0.6-10A)ではるかに多数の波長で中性子ホログラムの測定をめざす。 平成24年度には主にJ-PARCでの測定系構築、試料作成を行った。パルス中性子源でのホログラフィーは世界的にも初めての試みであり、J-PARC装置側と綿密な打ち合わせを行った。それをふまえH24年度後半にJ-PARCのBL10装置のマシンタイムを申請、採択された。平成24年度1月までの期間にBL10実験に最適化した装置をX線ホログラフィー装置の測定系をベースにLabviewを用いて構築した。とくにJ-PARC装置の特性、とくにイベント処理機能をホログラフィー測定に活用した。また実験に必要な物品としてB4C中性子遮蔽材等を購入している。同時に、初めてのJ-PARCホログラフィー実験のための試料を検討し、金属材料研究所においてCaF2にEuをドープした大型単結晶を育成した。そのための原料を購入している。これらの準備を行い、平成25年2月と3月にBL10で実験を行い、世界で初めてのパルス中性子ホログラフィーデータを得ることに成功した。 実験準備と平行し、韓国原子力研究所の専門家との議論、中性子科学会、物理学会などで情報収集、技術検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の装置構築、試料選定と単結晶育成の準備を綿密におこない、J-PARCでの最初の実験にとりくんだ結果、世界で最初のパルス中性子ホログラフィーのデータを得る事に成功した。まったく新しい試みであることから技術的な困難が予想されたが、実験はほぼ期待通りの進展を見せている。また最初の試料となったEuドープCaF2単結晶も、予想通りの十分な強度がありテスト試料として適切であったことが証明できた。2月、3月の実験では、技術的な問題点の洗い出しも目標としており、実際、中性子遮蔽、γ線検出などで課題が見つかっている。実験後に検討を進めており、それらの課題が技術的に克服可能なものと判断できたので、さらなる高度化が可能という判断をしている。以上の事から、平成24年度は順調に計画が進展したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに平成25年度前半でマシンタイムを確保しており、6月に実験予定である。平成24年度実験で見いだされた課題を克服し、さらなる高度化をすすめる。また、平行してデータ解析を進め、世界最初の多波長ホログラフィー法による高精度局所構造イメージングを実現する。これは成功すればNature級の成果と信ずるので、解析をいそぐ。平成25年度後半以降には、デモンストレーションの段階を終了し、物性研究への応用にはいる。ターゲットとして中性子シンチレーション検出器の基幹単結晶でのドーパント周りの局所構造研究をめざし、専門家からの試料提供を議論している。また、別予算で偏極中性子発生装置の構築を進めており、平成25年度末ないし26年度には偏極中性子を用いたホログラフィーのテスト実験を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では、さらなる装置の高度化を進めるため、検出系機器、遮蔽材購入を行う。γ線検出器などの高額の基幹機器は引き続きJ-PARCの装置を借用できるので、大規模な出費は不要であるが、できるだけ本計画専用の機器を購入していく。また、シンチレーション用単結晶作成のための原料(7Li同位体など)を購入し、金属材料研究所において単結晶を作成する。機器購入で約20万円、原料購入で10万円を予定している。また、J-PARCで実験2回、準備2回程度の旅費の確保が重要であり、約40万円を予定する。この旅費には会議などでの平成24年度成果の発表も含まれる。
|