研究課題/領域番号 |
24656007
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
酒井 政道 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40192588)
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研究分担者 |
長谷川 繁彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50189528)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピン偏極度 / スピントロニクス / スピン偏極電流 / 異常ホール効果 / スピン軌道相互作用 / キャリヤ移動度 / 論理演算ゲート / 排他的論理和 |
研究概要 |
単極性伝導体(電子あるいは正孔のどちらか一方が電気伝導に寄与する導体)から構成したチャネル領域にスピン偏極させたバイアス電流を流すとき、このキャリヤスピン偏極性が横抵抗率(ρyx)および縦抵抗率(ρxx)に及ぼす影響を理論的に調査した。その結果、電流チャネル長がスピン拡散長以下という条件の下、ρyxおよびρxxをスピン偏極度(P)の関数として解析的に表現することが可能であり、その結果、縦横抵抗比ρyx/ρxxがスピン偏極度(P)に比例し、その比例係数がキャリヤ移動度μと磁場の強さに換算したスピン軌道相互作用の強さ(S)の積であることを見出した。したがって、チャネル材料における移動度(μ)とスピン‐軌道相互作用の強さ(S)を予め求めておくことで、縦横抵抗比あるいは縦横電圧比を測定することによって、チャネル電流のスピン偏極度の絶対測定が可能であることが分かる。加えて、平行スピン同士の合成電流のスピン偏極度は100 %であり、反平行スピン同士の合成電流のスピン偏極度は0 %であるという、スピン偏極度の線形性を利用すると、原理的にORおよびXORゲートが構成可能であることを理論的に提案した。上記の理論予測を実証するために、ソース電極に強磁性金属ニッケル(Ni)を用い、電流チャネル(チャネル長≒10μm)には非磁性金属、金(Au)を用いた準微小ホール素子(Ni/Au)を作製し、Ni電極からスピン偏極電流を注入しながら、ホール抵抗及び横磁気抵抗測定を外部磁場下で行った。ホール抵抗には、Au特有の振る舞いが観測されたのに対して、横磁気抵抗には、正の横磁気抵抗(約0.3%@5 T)が観測された。単体のNiは負の横磁気抵抗を示すこと、単体のAuは弱磁場条件では横磁気抵抗を示さないことがわかっているので、我々の実験結果にはスピン偏極電流の注入効果が反映されていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)バイアス電流に対する横抵抗及び縦抵抗率をキャリヤのスピン偏極度の関数として表現するという理論的研究が遂行できた。 (2)その理論的予測を実証するための微小ホール素子作製に着手し、チャネル長が約10μmの素子が作製出来た。 (3)外部磁場を用いた予備的測定を行い、ホール抵抗及び横磁気抵抗に対するスピン偏極電流注入効果を確認できた。 以上によって、スピン偏極度計の動作原理的の検証準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)準微小ホール素子Ni/Auにおいて観測された正の横磁気抵抗を、24年度に実施した理論計算にもとづいて、特にスピン偏極電流の影響を定量的に調査する。ニッケルの代わりのコバルト(Co)をソース電極に用いた準微小ホール素子Co/Auを作製し、同様の実験及び解析を実施する。 (2)ソース電極に、高いスピン偏極度をもつ強磁性金属を採用した、微小ホール素子を作製し、スピン高偏極バイアス電流を流し、空間的に一様な外部磁場下でのホール抵抗および横磁気抵抗を磁場の関数として解析することによって、電流チャネル領域のスピン偏極度を推定する。この測定をソース-ドレイン間距離を変えながら実施することによって、スピン偏極度のソース電極からの距離依存性を評価する。上記の測定を、外部磁場を印加せずに実施し、同様の解析を行い、スピン偏極度のソース電極からの距離依存性を評価する。 (3)24年度に実施した単極性伝導体に関する理論的研究を両極性伝導体に発展させる。 (4)非磁性体チャネル材料のキャリヤ移動度を高くして、スピン偏極度の検出感度を上げる。キャリヤ移動度を高くするために、エピタキシャル成長技術を用いて結晶の品質を高める。 (5)ソース電極を、互いに並列する二つのソース電極構造にした2入力-1出力型の論理演算ゲートを製作する。ソース電極の磁化を平行にすることによってORゲートを、また、反平行にすることによって、XORゲートを作製する。
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次年度の研究費の使用計画 |
【設備品】1,500 千円 薄膜結晶成長用小型電子銃 【消耗品】 300 千円 遷移金属、希土類金属、真空部品 合計 1,800 千円
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