研究課題/領域番号 |
24656007
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
酒井 政道 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40192588)
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研究分担者 |
長谷川 繁彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50189528)
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キーワード | スピン偏極度 / キャリヤスピン偏極度 / 電流スピン偏極度 / 単極性伝導 / 両極性伝導 / 排他的論理和ゲート / スピン軌道相互作用 / TbFeCo |
研究概要 |
25年度では、スピン偏極度には、アップスピンとダウンスピンのキャリヤ濃度に基づいて定義されるキャリヤスピン偏極度Pcと、電流密度に基づいて定義される電流スピン偏極度PJの2種類あることに留意して取り組んだ。24年度までに、前者のPcがホール抵抗(HR)と横磁気抵抗(TMR)に及ぼす影響は予測出来ていたが、PJがそれらに与える影響については、理論的に不明であった。後者のPJが非磁性体中のスピン蓄積の指標であり、排他的論理和(EXOR)ゲートの性能を実質的に決めていると考えて、25年度では、24年度の計算に用いたモデルに、スピン注入によって生じる非磁性体中のスピン蓄積の影響を取り入れて、HRとTMRの表式を解析的に導いて、それぞれPJの関数として表現し、それに基づいて、数値計算を、非磁性チャネルが単極性伝導の場合とそれが両極性伝導の場合について行った。 EXORゲート動作の成否は、強磁性体ソース及びドレイン電極における相対磁化方向が互いに平行時(P状態)と反平行時(AP状態)との間で、出力応答に巨大変化が発生するかどうかに依る。25年度では、強磁性電極(Co)と非磁性両極性伝導体(YH2)チャネルから構成されるホール素子を作製し、磁気抵抗(TMR)及びホール抵抗(HR)特性に、スピン蓄積による異常ホール効果を見出し、上記の理論計算との比較によって、観測されたのはP状態に対応することが分かった。このことはソース電極からはスピン偏極正孔が、また、ドレイン電極からは、スピン偏極電子がYH2中に注入できることを意味する。実際に、理論計算との比較によって、PJ=0,24と見積ることができた。 一方、AP状態を、低キュリー点材料TbFeCoを用いて作製することに取り組み、約1μm隔てて隣接する2本のTbFeCo細線の相対磁化方向を局所レーザー加熱によってAP状態に着磁する技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
排他的論理和(EXOR)ゲートに関して、理論予測を実証するための論理素子が作製途中で完成に至っていないため、EXOR動作の実証実験が出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ソース電極に、高いスピン偏極度をもつ強磁性金属を採用した、微小ホール素子を作製し、スピン高偏極バイアス電流を流し、空間的に一様な外部磁場下でのホール抵抗および横磁気抵抗を磁場の関数として解析することによって、電流チャネル領域のスピン偏極度を推定する。この測定をソース-ドレイン間距離の関数として測定することによって、電流スピン偏極度のソース電極からの距離依存性を評価する。上記の測定を、外部磁場を印加せずに測定し、同様の解析を行い、電流スピン偏極度のソース電極からの距離依存性を評価する。 (2)ソース電極を、互いに並列する二つのソース電極構造にした2入力-1出力型の論理演算ゲートを製作する。ソース電極の磁化を平行にすることによってORゲートを、また、反平行にすることによって、EXORゲートを作製する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の使用計画に、設備品として、薄膜結晶成長用小型電子銃(1,500千円)を計上したが、研究目的に合致した仕様製品が、この価格では購入できないことが判明したため、購入を見送った。その代わりに、BN坩堝、シャッターモデル回転導入期などの消耗品に充てることになり、当該残額が発生した。 (1)ナノボルトメーター 293,541 円、(2)液体ヘリウム 255,000円、(3)大阪大学産研ナノテク設備供用拠点の装置利用料、580,000円、(4)旅費(出張実験、成果発表)291,000円 合計 1,419,541円
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