研究課題
本研究が提案する排他的論理和(EXOR)ゲートは、自由電子のもつスピン軌道相互作用とスピン偏極度との結合性を利用して、単一の電流チャネル領域で、論理演算プロセスを完結させるものである。そのような素子作製には、(Ⅰ)スピン注入用強磁性電極磁化の平行・反平行着磁、(Ⅱ)高μS値非磁性導体の開発(μはキャリヤ移動度、Sはスピン軌道相互作用による有効磁場)、(Ⅲ)ホール素子チャネル長の短小化、と云う3段階を経る必要がある。25年度の第1段階に引き続き、26年度は第2段階に進み、非磁性チャネル材料としてCuを用いた研究を行った。ホール素子では、磁性電極にTb26Fe66Co8(以下TFCと略記)を、チャネル部にCu(長さ約10μm)を用いた。TFC電極からのスピン注入を確認する目的で、ホール抵抗(HR)と横磁気抵抗(TMR)の測定を行った。TFC/Cuのホール係数はCu単体のホール係数の約160倍に達した。符号も反転している。このHRには、強磁性電極からのスピン注入由来の異常ホール効果が含まれている可能性が高い。一方、TFC/CuのTMRは負の横磁気抵抗を示し、そのTMR比は5Tの磁場下では約0.6 %である。Cu単体のTMRの符号は正であるので、TFC/Cuの示す負のTMRにも、TFC電極からのスピン注入由来の効果が現れていると考えられる。25年度に開発した化学ポテンシャルのスピン分裂を考慮したモデル計算(HR)と実験データ(HR)を比較することによって、Cuチャネル領域のμS値として約2が得られた。また、ソースとドレイン電極の磁化が互いに平行な場合と反平行の場合とでHRやTMRにどのような違いが現れるかに注目した。平行磁化ではHR信号に磁場変化に対してヒステリシスが無いのに対して、反平行磁化では顕著なヒステリシスが観測された。これが化学ポテンシャルのスピン分裂に基づく現象かどうかは、引き続き、調査・検討が必要である。ホール素子の非磁性チャネルとして、Cuの代わりにYH2を用いた研究も行った。
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http://www.fms.saitama-u.ac.jp/lab/sakai/