研究課題/領域番号 |
24656008
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
工藤 一浩 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10195456)
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研究分担者 |
酒井 正俊 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332219)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 無溶媒印刷 / 熱プレス / 薄膜デバイス / 有機半導体 / 超音波融着 |
研究概要 |
予備的に進めていた熱プレス法について、C8-BTBTを有機半導体材料とした研究を開始した。C8-BTBTは高移動度を示す有機半導体材料として広く利用されている材料で、およそ125℃で溶融することが知られている。この融点は、基板として用いるポリイミドフィルムの融点よりも十分に低い温度なので、加熱・加圧を利用した無溶媒印刷による薄膜トランジスタ作製プロセスの研究の材料として適している。平成24年度はこの材料を用いて、加圧・加熱による薄膜トランジスタの形成および性能評価を行った。従来型の熱クランプを用いた熱プレスだけでなく、ヒートローラーによって連続的に加圧・加熱が可能なラミネーターによる薄膜トランジスタの作製を行い、C8-BTBTの配向成長効果を確認した。ラミネーターを用いた薄膜作製では、C8-BTBT融液の流れる方向が規定されるため、融液が流れる方向に結晶の長軸が配向して成長することを見出した。また、フレキシブルトランジスタを作製し、曲率半径1mmまでは曲げによる不可逆的な性能劣化がほとんどないことを確認した。曲率半径1mm以下に関しては測定治具の改良が必要なため、限界曲率は明らかになっていないが、サブミリメートル台の曲げに耐えることが明らかとなっている。このように、加熱・加圧によるフレキシブル有機デバイスの作製が順調に進行したので、その発展型と位置付けられる、超音波による融着効果について検証を行うため、新規に導入する超音波ウェルダの検討を行った。超音波による融着は、加圧加熱を局所的に行うことに相当する。マクロな温度を上げることなく、デバイス部分だけを溶融して薄膜化することができると期待される。試料設置の方法や治具を繰り返し検討した結果、基板であるポリイミドフィルムに損傷を与えることなく、有機半導体層だけを溶融する条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加熱・加圧による無溶媒印刷プロセスの開発が順調に進行している。ラミネートによるC8-BTBTの配向成長効果のように、当初の想定にはなかった新たな知見も得られた。超音波による薄膜トランジスタ作製についても、基板に損傷を与えずに有機半導体層のみを溶融する条件を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、超音波による局所的な加熱・加圧の効果の検証と、それを利用したフレキシブル薄膜デバイスの作製プロセスの開発を進める。治具や超音波ホーンの形状を検討することによって、歩留まり高く、高スループットなプロセスを目指した開発を行う。また、ラミネートによる配向成長効果を活用してデバイスの性能改善を行うとともに、ラミネートにおけるスループットの向上も図る。ラミネートローラーと超音波振動を組み合わせることによって低温化した溶融法を開発すれば、基板フィルム材料の選択肢が大幅に拡大することも見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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