研究課題
本年度は基板であるプラスチックフィルムに損傷を与えることなく、有機半導体層だけを溶融する条件を見出すために超音波ウェルダを用いた有機半導体の溶融・薄膜化についての検討を行った。超音波ウェルディングは、接着剤では接着することができないプラスチック部品同士を瞬時に接合する技術であり、自動車の内装部品の接合などに広く用いられている。この技術の利点は、局所的かつ瞬間的な加熱加圧を行うことが可能である点である。本研究では、プラスチックフィルム間に設置した有機半導体の微粉末を加熱加圧することによって有機薄膜トランジスタを作製する新しい印刷技術として、この技術を活用した。超音波ウェルダの出力、超音波印加時間、試料台の温度を調節することによって電極やゲート絶縁膜を破壊することなく、有機半導体(C8-BTBT他)を薄膜化する条件を見出した。超音波による加熱加圧は局所的かつ、短時間であるため、基板全体を有機半導体の融点まで加熱しなくても薄膜を形成できることが確認された。また、従来型のラミネート方式と比較してスループットの向上が見込まれる。この手法で作製した薄膜トランジスタは良好な電界効果トランジスタ特性を示し、電界効果移動度0.19 cm2/Vsを得た。この値は、フレキシブル基板を用いた有機薄膜トランジスタの性能としては比較的高い値である。超音波による局所的な加熱加圧による有機薄膜トランジスタの作製は世界でも初の試みであり、特段のデメリットを生じることなく標準的な性能を示すトランジスタが作製できることを実証した。発展研究として、高スループット化(短タクトタイム)、ロールツーロール化、低温化が達成されれば、無溶媒、低環境負荷でフレキシブル有機半導体デバイスを作製する新しい印刷プロセス技術になると考えられる。
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