研究課題/領域番号 |
24656009
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青木 伸之 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (60312930)
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研究分担者 |
落合 勇一 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 名誉教授 (60111366)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フラーレン / C60 / 万能性基幹分子 / 光重合 / 光渦 / 電気伝導特性 / 金属/半導体 / グリーンエレクトロニクス |
研究概要 |
フラーレン分子を「万能性基幹分子:PS分子」として利用する,再生型エレクトロニクスの構築を目的としている。本研究の特徴は,一切のドーピングをすることなく,フラーレン分子間の結合状態の違いにだけで「金属」「半導体」「絶縁体」の機能を創発させる点にある。本年度はトポロジカルレーザー光の照射で期待される特異な分子間結合に着目し,その重合過程を解明することを目的として研究を進めてきた。 C60薄膜にグリーンレーザーからなる光渦の照射によって重合化が生じた領域は,分子間の共有結合が形成され,トルエン等の良溶媒に不要になるが,160℃のメチシレンに対しても耐溶解性があることが確認され,通常の光重合体とは異なる性質を持つことが示唆された。一方,電気伝導特性に関しては,ゲート電圧特性および電流-電圧特性から,光渦照射のドーズ量を増加して行くにつれてON状態(バックゲート+40 V)での電流値が減少していき,9 MJ/cm2程度を境に,それ以上では電流量が上昇に転じることがわかってきた。さらに,その際の特性としては電流値がゲート電圧に依存しない金属的な特性を有することが明らかになった。これは,高ドーズ領域における新たな重合相の出現を裏付ける結果を示している。またin-situでの評価では,30 Vまで電圧を印加して電流-電圧測定を行うと,測定回数を重ねるに従って電流量が減少していくことが観測され,さらに再び光照射を行うと電流値が回復することがわかった。これは高電界によって電流経路の結合が切断されることを示唆ており,電流を増加させる一時的な分子間結合の形成を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在フラーレン分子のPS分子応用に向けた,光渦レーザー照射による金属相の発現メカニズムの解明をめざし,レーザー照射による特性変化をin-situで評価するシステムの確立を行ってきており,その一つである新設計の真空プローバーがようやく導入された。これにより研究の大幅な進展が期待でき,また今後のin-situでのラマン散乱による評価や,選択的レーザー照射による回路形成といった研究への発展させていく。このことから,現在の進行状況としては若干遅れぎみではあるが,準備は十分に整えられてきている状況から,概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
液体窒素プローバーを用いて,光渦照射とその評価を進めていく。 ・in-situでの電気伝導特性評価とラマン散乱分光評価を行い,結合状態と電気伝導特性との関連性を明らかにする。・円偏光を導入して光渦の全角運動量を制御して光重合との相互作用を理解する。 ・低抵抗値化にはC60薄膜の結晶性の向上が不可欠との観点から,LB膜の利用や単結晶基板と基板温度制御による薄膜の結晶性の向上をはかる。 ・光電子分光や透過型電子顕微鏡および電子線回折による結合状態と結晶状態を同定する。 ・金属相/半導体相を作り分ける方法を確立し,回路形成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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