研究概要 |
強磁性金属ナノ粒子における光局在効果と低エネルギー磁化反転方式を実現するため、平成24年度は強磁性金属ナノ粒子を製膜し、その磁気光学効果を評価した。酸化マグネシウム基板、石英基板上に電子ビーム蒸着法によって自己組織的に強磁性金属(Fe, Co)ナノ粒子を製膜した。名目上の膜厚は1.5, 4, 6, 13 nmとした。また、製膜時の膜厚を増やすことでFe, Coの薄膜(膜厚20 nmの連続膜)を形成した。光局在効果の比較のため、同じ方法で非磁性のAuのナノ粒子を製膜した。本研究の一部は東北大学金属材料研究所との共同研究によって行われた。 作製した試料の波長400-1600nmの光透過スペクトル、及び、ファラデー効果のスペクトルを測定した。Auの試料は波長600 nm付近において光局在を示す透過率の極小を示した。一方、強磁性金属のFeとCoナノ粒子試料は全波長範囲にわたって平坦な光透過率を示した。作製したFe, Coナノ粒子試料では光局在効果は十分ではないことが明らかになった。Fe, Coのファラデー効果を測定したところ、0.1~1°のファラデー回転角、及び、楕円率を観測した。膜厚に比例してファラデー回転角と楕円率がスペクトル全体で大小する磁気光学効果の理論式からずれ、膜厚の違いによってファラデー回転角と楕円率の最大波長が異なることが明らかになった。以上の現象を説明するために、古典的な電子の散乱モデルを用いてFe, Coのナノ粒子の磁気光学スペクトルを計算した。計算の結果、電子の平均自由工程がナノ粒子の膜厚と同等になると、非弾性散乱によって比誘電率、特に、ファラデー効果の大小に関係する比誘電率の非対角項が大小することが明らかになった。計算された比誘電率を基に実験結果を再現した。 以上の研究成果は1件の査読付論文(英文)、1件の国際会議論文、7件の国内会議論文として発表した。
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