研究課題/領域番号 |
24656010
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
清水 大雅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345170)
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キーワード | 強磁性体 / 磁性ガーネット / 磁気光学効果 / 磁気異方性 / 磁化反転 |
研究概要 |
平成24年度の研究によって、強磁性金属そのものの光局在効果による磁気光学効果の増大と、磁気異方性の制御は困難であることが明らかになった。平成25年度は、絶縁性フェリ磁性体である磁性ガーネットの磁気光学効果や試料の作製法、結晶歪による磁気異方性について研究した。磁性ガーネットの磁気異方性は使用する基板や組成、歪、キャリア濃度によって変化することが知られており、キャリア濃度を光や電場で制御することにより磁気異方性を制御可能である。本研究では磁性ガーネット薄膜を作製し、X線回折測定、ファラデー回転角スペクトルと磁場依存性を評価した。製膜にはマグネトロンスパッタリング法と有機金属堆積法(MOD法)を用いた。 マグネトロンスパッタリング法によりCe置換イットリウム鉄ガーネット(Ce:YIG)の製膜条件を最適化した。X線回折測定結果からCe:YIG薄膜の回折半値幅は良好であり、波長600nmにおいて1000度/cmのファラデー回転角を得た。 またMOD法により製膜したBi置換イットリウム鉄ガーネット(Bi2Y1Fe5O12, Bi:YIG)薄膜について述べる。製膜にはMOD原料BIFEY(2/5/1)を用いた。石英及び、GGG基板上にスピンコートにより原料を塗布し、アニールによりBi:YIG薄膜を製膜した。石英基板上のBi:YIG薄膜は弱い垂直磁気異方性を示し、アニール温度の上昇とともに垂直磁気異方性が強くなった。また、GGG基板上に製膜したBi:YIG薄膜は面内磁気異方性を示し、アニール温度の上昇とともに格子歪が小さくなり、垂直磁気異方性が大きくなることが明らかになった。一部の製膜ではMOD原料にSiO2を添加し、3価のFeを4価のSiで置き換えることによって磁気異方性の制御を試みた。SiO2の添加に伴い格子歪が変化し、垂直磁気異方性が大きくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は外場(光、電場、歪)による磁化反転を起こすための磁性材料として絶縁性のフェリ磁性体である磁性ガーネットの製膜条件を確立した。 マグネトロンスパッタリング法によりCe:YIG薄膜を製膜し、製膜条件とファラデー効果の大小の関係性を明らかにした。また、有機金属堆積法(MOD法)によりBi:YIG薄膜を製膜し、製膜条件とファラデー効果の大小の関係性を明らかにした。今後、磁性ガーネット薄膜を構成する元素の組成を変化させ、キャリア濃度や格子歪と磁気異方性の関連性を明らかにする。現時点では、3価のFeを4価のSiで置換して電子を供給し磁性ガーネットのキャリア濃度を増大させる目的で添加したSiO2がキャリア濃度よりも、格子歪を大きく増減させ、格子歪による磁気異方性の変化が顕著になっている。磁性ガーネットのキャリア濃度の制御は磁気異方性の制御に不可欠であるが、まだ達成できていないため、研究はやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
磁性ガーネットの磁気異方性を外場(光照射や電場)によって制御するには、磁性ガーネットに加わる格子歪の影響による磁気異方性に注意しつつ、キャリア濃度を制御することが重要である。今後は磁性ガーネットの格子歪を一定に保ちつつ、キャリア濃度を供給する不純物濃度を変化させ、キャリア濃度と磁気異方性の関係性を明らかにする。キャリア濃度と磁気異方性の関係性を明らかにしたのち、磁性ガーネットのキャリア濃度を光照射や電場によって変化させ、一定磁界における磁性ガーネットの磁気異方性を外場によって制御する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の助成金にて購入した磁性ガーネット作製用の消耗品であるスパッタリングターゲット、石英基板にて磁性ガーネット製膜実験、製膜条件の最適化を行った。平成24年度に購入にした消耗品が十分であったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は磁性ガーネットの磁気異方性を外場(光、電場)やキャリア濃度により制御すべく、その組成依存性、不純物濃度依存性、製膜基板依存性を明らかにする予定である。新たに磁性ガーネット作製用のMOD原料や基板を購入し、助成金を使用する予定である。
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