六方晶窒化ホウ素(h-BN)の結晶学的特性を活用して、サファイア基板上にマクロテラスアレイとマクロウォールアレイをする手法により、産業応用に対応できる面積があり、原子レベルで平坦な表面と高い結晶品質を実現することが目標である。平成24年度は、BCl3とNH3を原料とする化学気相法(CVD)により、サファイアc面基板上にc軸方向に配向したBN薄膜の成長を達成したが、25年度はさらに結晶性を向上させるためのCVD条件の最適化と共に、選択成長のための微細加工条件の探索を進めた。具体的に得られた結果・知見は以下の通りである。 1) まず、ガス流に対して基板を垂直に配置することにより、特性を大幅に改善させた。この条件において常圧で作製した薄膜については、成長温度(Tg)の上昇に伴い結晶化が促進され、1500 °Cにおいてc軸に強く配向した薄膜が得られた。しかし、さらに高い温度では、過度の基板窒化による結晶性の劣化が示唆された。発光特性は結晶性と強い相関があり、1500 °Cにおいて、不純物発光ではあるがh-BNからの最も強い発光を得た。 2) 20 kPaの減圧成長においても、常圧成長と同様に、結晶性と発光特性には正の相関があり、Tgに対して類似の傾向を示した。常圧成長との違いは、特性が改善されるTgが1200-1300 °Cに下がることである。さらに1200 °Cにおいて作製した薄膜は、基板に対して面内方位が{100}h-BN // {110}sapphireにそろった薄膜が得られ、厚膜のh-BN薄膜としては初めて明確な単結晶成長を達成した。この条件では、テラス、ウォール結晶を作製する上で不可欠な横方向成長が促進されることも示した。 3) 反応性イオンエッチングの各種条件依存性から、BCl3/Cl2供給比の増大により、サファイア/h-BNエッチングレート比を上げられることを明らかにした。
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