研究課題/領域番号 |
24656015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 浩之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80550045)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 液晶 / ブルー相 |
研究概要 |
本研究では、二光子励起光重合法などにより微細な構造を作製し、ブルー相液晶などのフラストレーションを有する液晶を人為的に創発することを目指している。今年度は、ブルー相のディスクリネーション格子を模倣した三次元構造の作製に取り組み、5ミクロン以下の周期を有する構造の作製に成功した。構造に液晶を充填し、光学テクスチャの観察を行ったところ、フラストレート相が発現しているかどうか確認はできなかったが、構造の空隙部分に液晶が浸透することを確認した。 試料の観察像より、フラストレート液晶が発現しているか確認するためには、試料の回折像であるコッセルパターンを解析する必要がある。そこで、コッセルパターンを解析するプログラムを開発し、ブルー相を発現する液晶材料においてその有用性を確認した。構造が完全な立方対称性を有していない場合にも回折像を計算できるよう工夫し、電界印加により変歪したブルー相液晶においてその妥当性を確認した。 フラストレート液晶の機能応用という点に関しては、構造の変歪と屈折率の変調を同時に評価できる干渉顕微鏡を構築し、ブルー相液晶を発現する液晶材料を用いて系の有用性を評価した。今後、微細構造と液晶を組み合わせた系においても、同様の評価が行えるようになる可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二光子励起光重合法による微細構造の作製については申請書よりも若干遅れているが、観察像の解析のためのプログラム開発や機能応用のための評価系の構築など、研究全体としてはフラストレート液晶の発現と機能応用、という目的の達成に近づいていると感じている。二光子励起光重合法による三次元構造の作製に関してては、構造が小さくなりすぎると構造の自立ができないことや、洗浄により構造が流されてしまうこと、および光学系およびレーザー装置の都合により作製できる構造の解像度が低下していまうなど、技術的問題が課題となっているが、プロセスや材料などを見直すことで乗り越えることを考えている。プログラム開発や機能応用のための評価系を構築しているので、試料の評価は昨年度よりも効率的に行えるようになると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も二光子励起光重合法による微細構造の作製と液晶充填による観察を続け、前年作製したプログラムや光学系を利用して評価を行う。これまではメタクリレート系の材料を使用してきたが、その他の材料や分子配向性を有する材料などを検討する。特に、構造の自立性、および液晶との接触面における分子配列の規制力という観点から、重合後に変形の少ない材料、および分子配列性を有する材料を選定し、実験を行う。 一方、得られた実験結果を適正に評価するためには、研究者が誘発しようとする人工フラストレート液晶とブルー相液晶の特性がどのように異なる、あるいは似ているのかを正確に把握する必要がある。そのため、前年度に構築した干渉顕微鏡を用いて、自発的にブルー相液晶を発現する材料を評価し、ブルー相液晶の特性を明らかにする。その後、液晶を充填した微細構造の評価を行い、特性の違いがみられるか調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
微小構造を作成するための消耗品や評価のための光学部品などの購入に充てる予定である。また、ブルー相液晶を含むフラストレート液晶の最新の機能応用に関する情報収集と、これまでの研究で得られた成果の発表のため、国際会議に出席予定である。
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