研究課題
時間分解テラヘルツ(THz)電磁波分光法を用いて、平成25年度では以下の(1)と(2)の成果を得た。(1)i-GaAs(d nm)/n-GaAs構造:表面フェルミレベルピニングによってi-GaAs層に均一な電場が発生する。光変調反射分光法を用いてFranz-Keldysh(FK)振動を観測し、その解析から、d=200、500、800、1200nmにおいて、それぞれ、電場強度が28、12、8、6kV/cmという結果が得られた。i-GaAs層厚依存性の系統的な実験から、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波振幅が電場強度に対して線形的に増大することを見いだした。この結果は、i層の内部電場によるLOフォノン分極の増大が、THz電磁波強度の増強の起源であることを示している。(2)GaAsのp-i-nダイオード構造:内部電場をバイアス電圧によって自在に制御できる。逆方向バイアス電圧(i層の内部電場)が高くなるに従って、連続的、かつ、劇的にコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波が増強されることを見いだした。電場強度は、電場変調反射分光法によって観測されるFK振動の解析から評価した。約50kV/cm以下の低電場領域では、(1)の結果と同様に、THz電磁波振幅は電場強度に比例する。一方、約100kV/cm以上の高電場領域では、THz電磁波振幅は電場強度の2乗に比例し、2次の非線形感受率の寄与による増強が明らかとなった。本研究の一連の成果から、半導体エピタキシャル構造(平成24年度のGaAs/InAlAs歪み多重量子井戸構造を含めて)の内部電場を制御することによって、LOフォノン分極を介して、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度を制御できることが統一的に明らかとなった。この成果は、コヒーレントLOフォノンを利用するTHz電磁波デバイスを開発するための指針となるものである。
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