研究課題
窒化物半導体は混晶とすることで太陽光の全スペクトルをカバーできるため早くから高効率太陽電池への貢献が期待されてきたが、利用する波長範囲が狭く、その上試料の欠陥密度が高いため、実験値は理論値を下回っている。本研究では、pn接合太陽電池のp形トップ層の混晶組成に傾斜をつけ、内部電界を誘起させることで、試料の品質が悪くても、太陽電池としての高効率化を得る手法の有効性を明らかにすることを目的としている。昨年度までの研究で傾斜組成としたp形トップ層の伝導性制御と結晶品質に課題があることが分かったことから、本年度は、p形結晶の高品質化を妨げている深い準位とピエゾ電界効果を見積もるとともに、電界による光電流の増培係数を評価した。まず、傾斜組成試料におけるピエゾ電界効果を数値計算により評価した。+C面上に作製した試料では1ミクロンあたり10%の組成変化でピエゾ分極電荷の形成により単位体積あたり10の16乗程度の電子密度が誘発されることが示唆され、この補償にはそれを上回る高濃度のp形ドーピングが必要であることが分かった。PL法、FTIR 法、ならびにラマン散乱法を用いて、成長時に導入される格子欠陥が呈する局在格子振動を評価した。タンデム形太陽電池に適切と期待されるSi基板上への窒化物結晶成長法において、AlInNバッファ層の効果を見いだしていたが、この試料では貫通転位のみならず、Ga空孔と酸素による複合欠陥の導入が低くp形伝導に適していると推測された。ラマン散乱法で炭素による局在振動を見いだすとともに、p形ドーピングの活性化率向上にはGa空孔と酸素の複合欠陥の導入を抑制することが必須であることを明らかにした。pn接合に逆バイアスを印加し、光電流の増培係数を評価した。窒化物試料でも参照試料としたSiダイオードやGaAs系ダイオードと同程度の増培係数が得られることが分かった。
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