研究期間全体を通した成果の概要を以下に示す. 無機ナノ粒子に金ナノ粒子を用い,これにSide-end型液晶基であるシアノビフェニル誘導体をアルキル基とともに導入することに成功した.これと5CBとの混合試料のER効果には,表面修飾金ナノ粒子の凝集状態が影響することを明らかした.特に,アルキル基としてデカンチオールを導入した表面修飾金ナノ粒子を5CBに20wt%添加すると,電場印加下で大きな降伏応力,粘度増加,およびシェアシニングを示し,電場印加により表面修飾金ナノ粒子が高次構造を形成していることが示唆された. また,Side-on型液晶基として,3環系のメソゲン基の一端にシアノ基を,他端にオクチルオキシ基を有し,その側方にデカンチオールをエーテル結合させた化合物を単独で,およびヘキサンチオールとともに金ナノ粒子に導入することに成功した. 最終年度において,Side-on型液晶基の末端極性基をフルオロ基としたもの,さらに4環系としたものについて,それぞれ金ナノ粒子に導入することに成功した.これらと5CBとの混合試料の電場下における流動特性は,いずれもSide-end型の場合と異なり,ニュートン流動を示すことが明らかとなった.すなわち,これらの系では分散型ER流体としての特性は確認できなかった.しかし,3環系で末端にシアノ基を有する場合に5CBときわめて高い相溶性を示したことから,さらに表面修飾金ナノ粒子の含有量を増加させることで,さらなるER効果の向上が期待される. 最終年度には,無機ナノ粒子としてシリカナノ粒子にSide-on型液晶基を導入することにも成功した.得られた表面修飾シリカナノ粒子は金ナノ粒子の場合とは異なり,単独で液晶相が発現している可能性が示唆された.この系では収量の関係からER効果の測定は行えなかったが,表面修飾金ナノ粒子とは異なるER効果の発現が期待される.
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