研究課題/領域番号 |
24656025
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
大島 武 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (50354949)
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研究分担者 |
藤ノ木 享英(梅田享英) 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 准教授 (10361354)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 単一光源欠陥中心 / 欠陥エンジニアリング / 炭化ケイ素 |
研究概要 |
炭化ケイ素(SiC)中の単一光源となる欠陥中心を探索するため、半絶縁性(SI)六方晶(4H)SiC基板に室温で2 MeVの電子線を1E13~1E17/cm2の範囲で照射し、その後、アルゴン雰囲気中で300 ~ 500 °Cの熱処理を30分間行った。発生した欠陥を共焦点顕微鏡(CFM)やフォトルミネッセンス(PL)で観察することで単一光源の生成の有無を調べた。以下に具体的な結果を示す。 ・室温におけるCFM観察をしたところ、従来に報告されている900nm付近の波長を有するシリコン空孔(Vsi)からの発光に加えて、670~700nm付近に非常に強い発光(最高2E6 Cts/s)を有する欠陥が観測されることが判明した。また、欠陥の生成量は電子線の照射量が多いほど、熱処理温度が高いほど多くなることも判明した。 ・低温(80K)でのPL測定より、室温で700nm付近に観測された発光の起源がシリコン格子位置の炭素と炭素空孔の複合欠陥(CsiVc)であることが判明した。さらに、ab-initio/group theoryを用いた計算より、この欠陥は従来Steedsら(PRB 80, 245202 (2009))により報告されていた中性のCsiVcではなく、正に帯電したCsiVcであると結論された。 ・CFMを用いたアンチバンチング測定から、CsiVcが単一光源であること、更に、アンチバンチングの形状から単純な二準位の励起ではなく、発光を伴わない第三の準位を有する単一発光源であることが判明した。 ・CsiVcの発光の安定性を調べたところ、観測したCsiVcのうち50%は非常に安定であったが、残りの50%は観測中に発光と発光の消失を繰り返すことが判明した(ブリンキング)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vsiに加えて、CsiVcが観察され、更に、計算よりこの発光中心が正に帯電したCsiVcであることを結論できたこと、単一発光源となる欠陥中心であるを検証したこ。よっておおむね順調に研究成果を挙げているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、発見した単一発光源であるCsiVcの生成条件や物性をCFMやPL、電子スピン共鳴(ESR)測定により評価することで、更に詳細に調べる。具体的には、 ・SIに加えて、n型やp型といった異なる伝導型の基板へ電子線を照射することで、CsiVcの生成との関係を調べる。ab-initio/group theoryを用いた計算より、今回のCsiVcが正に帯電していると考えられることから、基板伝導型の違いによるCsiVcの生成量の違いを調べることでCsiVcへの正の電荷供給源に関する知見を得る。 ・電子線照射量や熱処理条件をパラメータとして、CsiVcの生成量との関係を調べる。加えて、室温だけでなく昇温下での電子線照射も試みる。H24年度までの300~500 °Cに加えて、100 °C程度といった比較的低い温度からの熱処理を行うことで、この温度領域で消滅していく残留欠陥に関する情報を得るとともに、これらの欠陥がCsiVcの発光をどの様に阻害しているかを明らかにすることで、選択的にCsiVcを形成するプロセス確立に有用となる知見を得る。 ・CsiVcの詳細な物性理解の為に、光検出磁気共鳴(ODMR)測定等も併せて試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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