炭化ケイ素(SiC)中の単一光源となる欠陥中心の探索を進め、H24年度までに、半絶縁性(SI)六方晶(4H)SiC基板に室温で2 MeVの電子線を照射し、その後、アルゴン雰囲気中で300 ~ 500 °Cの熱処理を行うことで、従来に報告されている900nm付近の波長を有するシリコン空孔(Vsi)からの発光に加えて、670~700nm付近に非常に強い発光(最高2E6 Cts/s)を有する欠陥が観測されること、低温(80K)でのフォトルミネッセンス(PL)測定より、室温で700nm付近に観測された発光の起源が正に帯電したシリコン格子位置の炭素と炭素空孔の複合欠陥(CsiVc)であること、CFMを用いたアンチバンチング測定から、CsiVcが単一光源であること、更に、アンチバンチングの形状から単純な二準位の励起ではなく、発光を伴わない第三の準位を有する単一発光源であることを明らかにしている。 H25年度は、試料の熱処理温度とVsi及びCsiVcの関係をPLより調べた。その結果、Vsiは熱処理温度の上昇とともに減少し、800Cでの熱処理で観測されなくなることが明らかとなった。一方、CsiVcは熱処理温度の上昇とともに増加し、800Cでの熱処理で最大量を示すこと、更に高温での熱処理では減少に転じて1100°Cでの熱処理で観測されなくことを見出した。これより、CsiVcを選択的に形成するには800~1100Cでの熱処理が有効であると結論できる。 加えて、H24年度にCsiVcの発光に関してブリンキングを観測したが、H25年度はブリンキングのオン及びオフタイムに関する研究を進めた。その結果、オンタイムとして最大で6秒が観測されたが多くは1秒以下であること、オフタイムは分布幅が比較的小さくほぼ1秒以下であることが決定された。
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