研究課題/領域番号 |
24656030
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
臼井 博明 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60176667)
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キーワード | 表面・界面物性 / 複合材料・物性 / 自己組織化 / 電子・電気材料 / ナノ材料 |
研究概要 |
本研究は、末端に反応性官能基を持つ自己組織化膜(SAM)を無機材料表面に形成し、モノマーを蒸着することで無機/有機シームレス融合界面を持つ高分子薄膜を無溶媒で成長させることを目的とする。平成24年度の研究ではベンゾフェノンを末端に持つSAM表面にビニルモノマーを蒸着することで高分子薄膜を固定し、基板からの電荷輸送を促進できることを見出した。そこで本年度は、SAMの反応末端及び分子種が界面制御に与える影響を検討した。 酸化インジウムスズ表面に、末端官能基としてベンゾフェノンの他、エポキシド及びビニル基を持つSAMを作製した。この表面にテトラフェニルジアミノビフェニルのジビニル誘導体を真空蒸着し、真空中で加熱して反応させた。得られた膜を有機溶媒中で超音波処理することで、高分子の固定化を評価した。また、膜表面に電極を形成して正孔輸送型デバイスを構築し、電気的特性を評価した。さらにSAM形成による表面電位の変化を測定した。 反応性SAMを介した有機/無機界面の結合形成に関しては、ビニル末端が最も低温で反応した。界面の電気的特性に関しては、結合形成による電荷注入の促進が観察され、最も優れた界面特性を与えたのはビニル末端であった。従来、電荷注入特性はSAMによる仕事関数の変化に支配されるとされた来たが、表面電位測定及び界面反応の有無に対して比較を行った結果、界面の結合形成及びSAMの分子長がより大きな改善効果を与える要因となることが示唆され、シームレス界面の概念が有用であることが明らかとなった。 以上の結果、有機/無機シームレス界面を形成するために有効なSAM分子についての有用な知見が得られ、このような界面が有機電子デバイス構築にあたって有意義であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案した有機/無機シームレス界面の概念が、界面の電気的特性の改善に寄与し、デバイス構築に有用であることが示された。その機構が、従来のSAMによる界面制御の概念とは異なり、明らかに化学結合由来のものであることが示唆され、最適なSAM分子設計についての指針が得られた。これらに基づき、学術論文の発表及び多数の学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 最適化とデバイス応用 本年度得られたSAM分子種の効果に対する基礎的知見に基づき、最適なSAM分子の設計を行う。具体的には、できるだけ分子長が短く、反応性に富むSAMを用いる。この表面に正孔輸送高分子を蒸着重合で形成し、さらに発光層、電子輸送層及び電子注入電極を積層することで有機発光デバイスを形成する。これによってシームレス界面形成の効果をデバイスレベルで確認する。 (2) 異種プロセスへの拡張 旧来デバイス形成に関しては、物理蒸着プロセスが良好な結果を与えることが認識されているが、実用的には溶液プロセスがコスト的に有利と考えられており、一つの学術的潮流を形成しつつある。そこでこれまで得られたシームレス界面の概念を、溶液プロセスに拡張して適用することを試み、実用性及び汎用性の観点からも有用性を明らかにする。
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